研究実績の概要 |
我々が作成したTRIOBP-5(以下T5)アイソフォーム特異的 KO マウス(以下 T5KO マウス)の解析を進め、T5KO マウスが難聴を示すことを見出した。聴力解析の結果、T5KO マウスは T4/5KO マウスに比べ聴力の低下が緩やかであった。そして、T4/5KO マウスでは、消失していた内耳有毛細胞の不動毛の「根」が、T5KO では細いながらも存在していた。また、T5KO マウスの有毛細胞では TRIOBP-4(以下T4)が局在する「根」が存在するにも関わらず、TRIOBP-1(以下 T1)の根への集積が無くなっていた。これらの結果は、「根」は T4 のみでも束化されるが、十分な太さ・強度を持つためには、T1,T4の倍以上の長さを持つ分子である T5 が必要であることを示唆している。 「根」は他のアクチン細胞骨格と協働して形成される可能性がある。そこで、「根」の形成に関する TRIOBP 以外の分子、および TRIOBP の制御メカニズムを調べるため、TRIOBPに対する抗体を用いて内耳組織で免疫沈降を行い、相互作用するいくつかの受容体、接着分子、細胞骨格関連分子を同定した。その中には、蝸牛内環境の維持を担うタイト結合関連分子が存在しており、そのうち Occludin および ILDR1 について、遺伝子変異マウス を用いて解析を行った。その結果、これらも難聴の表現型を示すことがわかった(Higashi T., et al., J. Cell Sci., 2013)、(Kitajiri S., et al., Biol. Open, 2014)、(Katsuno T., et al., PLOS ONE, 2015)。今回共沈した分子群(アクチン結合タンパク質、細胞骨格関連分子、およびセカンドメッセンジャー等)からみても、TRIOBP が様々なアクチン形態形成に関わっている可能性は高い。
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