研究課題/領域番号 |
26293369
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北尻 真一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00532970)
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研究分担者 |
伊藤 壽一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90176339)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | TRIOBP / 根 / リン酸化 / MYPT / 加齢性難聴 |
研究実績の概要 |
TRIOBP-5 特異的KOマウスにおける根の形態を透過型電験で検証していたが、細い根が見られる場合もあれば、根らしきものが見られない場合もあった。これには切片の位置や傾きが関与するものと考え、三次元の立体的電子顕微鏡観察を行った。その結果、TRIOBP-5 KOの不動毛には細い根が存在することが示された。また同時に、根と同様にアクチン密度が高く上方の不動毛の中へ伸びるStereocilia Coreが、TRIOBP-5 KOでは数本にばらけている事が分かった。これはStereocilia Coreの形態維持にTRIOBP-5が関与していることを示し、その局在からTRIOBP-4も関わっていることが示唆される。 抗TRIOBP-5、抗TRIOBP-1抗体は作成していたが、生化学実験(ウェスタンブロット、免疫沈降など)に用いることのできるものを新たに作成した。またTRIOBP-4配列はTRIOBP-5の一部であり、これの特異的抗体を作成することは不可能であるため、GFP付きTRIOBP-4トランスジェニックマウスを作成した。これにより3つのアイソフォーム毎の局在を明らかにした。 抗TRIOBP抗体を用いて内耳組織から免疫沈降したところ、いくつかの候補分子とともにMYPTが同定された。TRIOBP-4/5 KOマウスではMYPTのリン酸化が抑制されており、野生型マウスでも加齢に伴ってリン酸化の抑制がみられた。つまりTRIOBP欠損はMYPTを介して加齢性難聴と同様の難聴病態を示している可能性が示唆される。現在、MYPTが脱リン酸化するとされるpMLC2および、内耳で発現している各種ミオシンのリン酸化に関して検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型およびTRIOBP-5 KOマウスにおける根の形態を三次元的に検証できた。これは連続切片を電験レベルで再構築するもので、高度な技術と労力を必要とするものであった。 今回あらたに作成したGFP付きTRIOBP-4トランスジェニックマウスにより、TRIOBP-4は根に加えてstereocilia core(上方の不動毛の中へ伸びるアクチン束)、クチクラ盤(有毛細胞のアピカル面下にあるアクチンの網目構造)に局在することが分かった。同部位での機能を知ることでTRIOBPを介する形態および機能をさらに理解できるものと期待される。 TRIOBPと結合し、リン酸化に直接関与する分子としてMYPTを同定することに成功した。これを介して、内耳で機能する種々の分子との相互作用、加齢性難聴の病態など広いTRIOBPの関与が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
MYPTを介するTRIOBPのアクチンおよびミオシン機能制御について、関与するミオシンを特定する。その特定されたミオシンの機能によって、内耳におけるTRIOBPパスウェイの全貌を明らかにする。また昨年、ヒト加齢性難聴の原因遺伝子としてTRIOBPの関与が示唆された。これは我々の、TRIOBP-4/5 KOマウスおよび野生型の加齢マウスでみられるMYPTのリン酸化の抑制データと通じる。加齢マウスモデルにおけるTRIOBPおよびMYPTの、リン酸化などの変化を検証する。またミオシン変異マウスでの検討も行う。ミオシンVI、ミオシンVIIaなど、その変異による不動毛変性の性状がTRIOBP変異によるものと似ているものも多く、これらのクロストークが示唆される。
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次年度使用額が生じた理由 |
TRIOBP-MYPT-Myosinの機能を包括的に理解する上で、内耳で機能する数多いミオシンのリン酸化と機能の変化の検証が必要である。これには各種変異マウスでの検討が理想的であり、その入手や作製、繁殖維持には次年度に大きな出費が予想されたため、本年度の使用額を制限した。
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次年度使用額の使用計画 |
抗リン酸化TRIOBP抗体および抗リン酸化MYPT抗体を作製し、野生型および各種ミオシン変異マウスでのリン酸化状態を検証する。これにあたり、リン酸化抗体の作製、各種ミオシン変異マウスの入手および作製、繁殖と系統維持に使用する。
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