研究課題
ウイルスのライフサイクルと宿主細胞の相互作用の検討:呼吸器ウイルスは上皮細胞への感染・複製・放出を経て発症し,その後宿主の防御機構によりウイルスが排除される.このウイルスのライフサイクルと宿主細胞の機能を検討することで,宿主のウイルス自然除去能が評価できる.そこで,臨床的検討としてRSウイルス感染の小児の鼻汁を用いた遺伝子解析をおこなっている.すでに倫理委員会へプロトコールを提出している.許可が得られれば,実際の臨床検体を用いたウイルスと宿主細胞の相互作用,特にウイルス排出機構との関連が明らかになる.ウイルス排除と重症化バイオマーカーを探索し本年の学会に発表予定である.基礎的検討としては,インターフェロンのウイルスの排除機構についての検討を開始している.ウイルス排除機構を検討する前に,ウイルス排除が阻害されている系として,上皮細胞へのウイルス持続感染系を確立し,これを応用して,ウイルスがなぜ排除されないのか,インターフェロンとはどのように関与しているかを検討することとし,今年度からこの課題を中心に検討を進めている.上皮細胞でのIFN誘導経路の抑制について検討をおこなうことにより,サブタイプの機能についての解析につながる.また実際に使用されている薬剤がウイルス感染時に抑制的に働くものをスクリーニング中である.この研究の応用として,IFN産生系にどのように作用しウイルスを除去する際の作用点について検討を進めている.さらに,ウイルスの鼻粘膜上皮感染による防御的粘液分泌の変化:粘液分泌にはMUC5AC遺伝子の関与が報告されている.今年度は粘膜上皮でのこの遺伝子発現とロイコトリエンの関与について検討し発表した.この研究はウイルス感染の自然免疫機構についての検討であり,ウイルス防御とのかかわりについて検討した.
3: やや遅れている
持続感染については上皮細胞の感染系はムンプス,麻疹ウイルスに完成手は確立している.しかし,課題としての呼吸器ウイルスに関してはまだ確立していない.その意味では「ウイルス排除機構とインターフェロンの関連」という課題については検討が進んでいるが,実際の呼吸器ウイルスと鼻粘膜上皮あるいは気道上皮との関連という目的についてはやや遅れているのが現状である.持続感染系で得られた生かと並行して,呼吸器ウイルス持続感染系の確立を模索してる現状である.小児呼吸器ウイルス感染での臨床的検討は順調に進んでいる.
鼻粘膜上皮細胞のウイルス持続感染系の確立達成度のところで述べたように,細胞株ではウイルスの持続感染系が出来上がっているが,これらの細胞株ではIFN産生系が正常と若干異なるため,本来の目的であるウイルス自然除去因子の探索には不向きであると考えられる.テロメラーゼで延命化した細胞への感染実験を繰り返しているが,まず気道上皮への呼吸器ウイルス持続感染の径を確立することを第一としたい.初代培養系での持続感染系の確立までは,siRNAやノックインなどの手法を用いてλIFNサブタイプのウイルス感染時の抑制状態あるいはウイルス排出機構についての検討を続ける.また,ウイルス増殖調節機構の解明とウイルス排出機構の解明,特に細胞骨格との関連について検討する予定である.λインターフェロンの免疫調節機構の検討では,調節性B細胞と濾胞ヘルパーT細胞との関連を進めていきたい.この両者の機能的細胞は現在トピックスとなっているだけでなく,種々の免疫異常疾患との関連が示唆されており,本施設でもアレルギー発症との関連ですでに論文を発表している.
英文校閲費用が論文作成に時間が要したため,今年度中に使用できず,翌年度の予算として計上したい
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