研究実績の概要 |
Type I, III IFNはあらゆるウイルス感染に対して宿主の炎症反応を惹起することで、非特異的な抗ウイルス効果を発揮する。産生されたtype I, III IFNは細胞のIFN受容体に作用し、細胞を抗ウイルス状態に導く。しかし、ウイルスがその細胞ですでに感染している状況では、その高度な炎症惹起反応が逆に宿主に有害であることが近年指摘されている クラリスロマイシン(CAM)は抗菌効果以外に抗炎症作用を持つことが知られている。その中でもRSウイルス誘導性pro-inflammatory cytokinesを抑制することが確認されているが、その作用機序は不明である。我々はヒト由来上気道上皮細胞を用いてRSV感染を行い、CAMの持つ抗炎症作用機構を詳細に検討した。我々はCAMが新たにRSV誘導性type I, III interferons (IFNs)の産生を抑制することを発見した。続いてtype I, III IFNs産生における主要な転写因子活性を検討したところIFN-β,IRF-3制御下の転写因子活性がCAM処置により有意に抑制された。さらに免疫染色を用いてIRF-3の細胞内局在を検討した結果,CAMはRSV誘導性IRF-3の核移行を抑制することで、RSV誘導性type I, III IFNsの産生を抑制していた。さらに,CAMはNIP-SNAP1及びNIP-SNAP2に結合することが分かった.SNAP1及びNIP-SNAP2はミトコンドリア外膜に存在する自然免疫関連因子で,NF-κBの活性化に寄与し,この結合によりマクロライド独特の作用が発現しているのかもしれない. 抗菌活性を持つCAMの適正使用という観点から抗炎症作用機構を解明しその作用点に焦点を当てた新たな創薬を目指すことは、臨床上、呼吸器感染性ウイルスに対する治療戦略を変え得る非常に重要な研究であると考える。
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