研究課題/領域番号 |
26293378
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩中 督 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90193755)
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研究分担者 |
石丸 哲也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00633629)
光石 衛 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90183110)
杉田 直彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70372406)
原田 香奈子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80409672)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小児外科 / 内視鏡外科 / テーラーメード医療 / シミュレーター |
研究実績の概要 |
本研究では、ラピッド・プロトタイピングの技術を用いて、実際の小児内視鏡外科手術を忠実に再現し、手術のトレーニングや患者個別の術前シミュレーションに利用可能な小児患者モデル(テーラーメードモデル)の開発、およびその有用性評価を行う。また、モデル内での手術手技を医師の評価および工学センサーを用いることにより、多角的に評価する手法の開発も行う。 初年度では、肺嚢胞性疾患の患者モデルの開発に着手した。まず、肺実質、血管、気管を含んだ簡易的な形状のモデルを試作し、素材の硬さ、接着具合の検討を行った。試作を繰り返した結果、血管周囲の組織を剥離し、内視鏡手術用のクリップで結紮、ハサミで切離するといった、一連の手術操作が可能な素材を決定することができた。 並行して肺嚢胞性疾患の患者のCT画像データを収集した。乳児の肺のCTをSTLデータに再構築したところ、CTの解像度の問題から、模擬手術が可能なレベルまで血管を再現することが困難であることがわかった。そこで、比較的年長児のデータを縮小して使用することとし、さらなるデータの収集・解析を行っている。 疾患モデル開発と並行して、以前の研究で作製した1歳児の胸腔モデルを用いて、モデル内での鏡視下縫合手技を、医師が手技ビデオを見て採点する評価手法を開発した。1歳児の胸腔モデル内での手技評価結果の方が、既存のボックスシミュレーター内での結果と比較して、小児内視鏡外科医の熟練度をより正確に反映しており、胸腔モデルが手術技能の評価に有用であることを示した。また、モデル内の手技において、失敗回数をカウントする減点方式の採点方法や、針糸の持ち替え回数といった評価方法が、より熟練度の差を反映することもわかった。今回開発した評価手法を、今後開発する種々の疾患モデルにおける手技評価方法に応用していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度で嚢胞性肺疾患の患者モデルを開発する予定であった。既に使用する素材の検討は済んでいるが、もととなるCT画像を選定中である。本年度は主に就学前の患児のCT画像を解析したが、更に血管や気管の細部まで描出されたCTデータを用いることが精密なモデルの作製にとって重要であると考え、対象を学童期以降まで広げてデータの解析を継続することとした。モデル作製の技術について目途は立っているため、次年度の製作開始でも翌年度以降の計画には影響しない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、適切な肺の画像データをもとに、肺臓器モデルを実際の解剖と同様の形状で作製する。小児の画像データを使用することが難しい場合は、成人の画像データを縮小して使用する等の対応を考えている。 肺臓器モデルを胸腔モデル内に設置し、模擬手術を可能とする。医師による手技ビデオ評価手法および、工学センサーでの手技評価方法を開発し、様々な熟練度の小児外科医の手術手技データを解析する予定である。 平成28年度以降では、実際の臨床で手術を行っている熟練医のデータをもとにトレーニングの目標値を設定し効果を検証する。また、術前シミュレーションとしての有用性も評価していく。腹部疾患のモデルの開発も並行して進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
疾患モデルとして、嚢胞性肺疾患モデルの開発を行っている。しかし、小児の画像は、体のサイズが小さい、息止めができないといった問題もあり、現在のCTの解像度では肺の細部の血管や気管まで描出することが困難である。本年度は主に就学前の患児のCT画像を解析したが、更に血管の細部まで描出されたCTデータを用いることが精密なモデルの開発にとって重要であると考え、対象を学童期以降まで広げてデータの解析を継続することとし、実際のモデルの製作は次年度に開始することとした。モデル製作の技術について目途は立っているため、次年度の製作開始でも翌年度以降の計画には影響しない。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の残額については、肺臓器モデルの製作費用に充てる。 次年度の請求分については、当初の予定どおり、工学センサーの設置、評価実験の費用、成果発表等に使用する。
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