研究実績の概要 |
皮膚潰瘍に存在する間葉系細胞から表皮ケラチノサイトへの直接転換による皮膚潰瘍治療方法の開発を目的として、真皮線維芽細胞に遺伝子導入することによって、ケラチノサイト同様の重層扁平上皮を形成する能力をもつ細胞への作製を試みた。 初代培養真皮線維芽細胞、表皮ケラチノサイトのmicro RNA array, micro array, いくつかのbioinformatic analysisの結果より、80余因子を選択し、レンチウイルスベクターを用いて皮膚線維芽細胞への遺伝子導入を行った。様々な組み合わせを検討した結果、29因子の導入により、表皮ケラチノサイト類似の形態、増殖動態を呈する細胞を誘導することができた。コラーゲンゲルを担体として用いた皮膚3次元培養において、誘導された細胞が重層扁平上皮形成能を有することを確認した。 誘導細胞の導入遺伝子特異的PCRの結果より、9因子がゲノム遺伝子に組み込まれていることが示唆されたため、同9因子を真皮線維芽細胞に遺伝子導入したところ、表皮ケラチノサイト類似の形態、増殖動態を呈し、3次元培養において、重層扁平上皮形成能を有する細胞を得ることができたため、今後は更なる因子の減少、最適化を進めていく。 本研究の結果より、外来性の遺伝子導入により、皮膚間葉系細胞から、重層扁平上皮形成能を有する細胞へ直接的な細胞系譜の転換を起こすことができることが明らかとなった。更なる最適化によりin vivo、潰瘍局所での転換を惹起することができれば、あらゆる原因からなる皮膚潰瘍病変を短期間で上皮化させる新しい治療として応用することが可能である。
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