研究実績の概要 |
まずC57BL/6Jマウス鼠径部脂肪塊よりASCsを分離精製後、徐放化bFGF添加群、非添加群に分けて培養し得られた培養上清中に含まれる種々の増殖因子(HGF, VEGF, TGF-ß1)をELISA法で計測した。 次にC57BL/6J(雄性・12-15週)マウスに対し、独自の方法でマウス下肢虚血モデルを作成し、以下に示す如く虚血下肢大腿に筋肉内投与した。ゼラチンハイドロゲル群(実験群1)、ASCs 1×106移植群(実験群2)、徐放化bFGF 30ug移植群(実験群3)、徐放化bFGF 30ug+ASCs 1×104混合移植群(実験群4)、徐放化bFGF 30ug+ASCs 1×106混合移植群(実験群5)。評価方法は継時的肉眼観察及びレーザードップラーを用いた血流定量評価を移植0,4,7日後に実施した。また、移植7日後に虚血肢を採取し、組織学的及び免疫学的観察 (αSMA,CD31,CD146,TGF-beta1)を実施した。 その結果、ELISAにおいては、ASCsより放出される増殖因子は徐放化bFGFの添加により増強された。下肢虚血モデルに対するレーザードップラーによる血流定量解析の結果、移植4,7日後において実験群4および5が他群と比較し有意な血流改善率を認めた。組織学的評価においても実験群4,5は他群と比較して内腔が大きく血管壁も厚く、かつαSMA,CD146,TGF-beta1陽性が示す如く新生血管の構造的安定化と成熟化が認められた。 以上より、マウス下肢虚血モデルにおいてASCsと徐放化bFGFの混合移植は単体投与群に比べより効果的な血管再生効果を提供し、かつ新生血管の構造的安定化と成熟化に寄与することが示唆された。
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