研究実績の概要 |
前年度に発生した研究代表者、研究分担者のその他の業務にかかるエフォートの増加、研究室の移転による動物実験業務の大幅な縮小など予想外のことが発生したことから研究を1年間の延長を認めていただいた。このような状況の中で、本年度はこれまで通りラット深下腹壁動静脈を茎とする筋膜弁モデルを用いて以下に示す研究を実施した。 Okudaらの方法に従って(Okuda T, et al, Ann Plast Surg 2010)、ラット深下腹壁動静脈を茎とする大きさ約3x2cm大の筋膜弁を作成し、同系ラット鼠蹊部脂肪塊よりあらかじめ分離精製した脂肪組織由来幹細胞(ASCs)および可溶性ゼラチンゲルに含浸させた塩基性線維芽細胞増殖因子(以下徐放化bFGF)またはその両方を種々の用量で筋膜内に複数個所に少量ずつ注入移植した。筋膜弁を再度元の位置に戻し、周辺との血行を阻害するためにシリコンシートで被覆後創閉鎖した。2,4週目に再度筋膜弁を採取してCD31、CD146、α-SMA、TGF-βなどに対する抗体を用いた免疫染色による再生血管の評価を実施した。その結果、各実験群においてCD31、CD146、α-SMA、TGF-βの発現の程度が異なり、特にα-SMA、TGF-βの発現が強く発現するなど定性的に実験群間における差が認められた。しかしながら筋膜弁主軸血管と末梢再生血管との間で起こる再生血管の“階層化”現象に対する検討に関しては検体サイズが小さかったことなどの理由から免役組織学的検証の限りでは十分な確認はできなかった。再生組織の“血管化”に関しても十分な検証はできなかった。
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