研究課題
1.代表的DAMPであるHMGB1は、分子内に存在する3つのシステイン残基(23,45,106番目)のチオール化の程度により、全還元型、部分酸化型、全酸化型3つのアイソフォームに分けられる。全還元型が細胞遊走活性、部分酸化型がケモカイン産生、全酸化型が恐らく炎症の終焉・修復活性を有するものと考えられる。そこで、これらの細胞生理活性・病態との関連を探る目的で実験して、以下の成果をあげ得た。1)牛胸腺から純化精製したHMGB1を用いて、HPLCを駆使し、これら3つのHMGB1のアイソフォームを作成した(牛とヒトのHMGB1は相同である)。得られた3つのHMGB1アイソフォームの活性(ケモカイン産生能、細胞遊走活性、SDF誘導活性など)に関しては検討中である。 2)実験的腎炎をラットに作成して、炎症中心部と辺縁部の組織を分取して、ホモジナイズし、免疫電気泳動上の泳動度の差異から、HMGB1の3つの分別を解析した。炎症中心部では酸化型のバンドが濃く発現していた。さらにこれを検証する目的で、3)上の3つのHMGB1を使い、HMGB1の3つのアイソフォームを特異的に識別するモノ クローナル抗体の作成に着手した。すなわちADLib (Autonomously Diversifying Library) 法(カイオーム社)を用い、おのおの3種のHMGB1に対する特異的モノクローナル抗体の作成に着手した。これは現在進行中である(カイオーム社)。2.あと一つの重要なDAMPであるヒストンにかんしても、ヒストンH2,H3 が関節リウマチ患者の関節液中量的に増加していること、このヒストンにもシツルリン化、アセチル化などエピジェネティクスな変化を受けているH2,H3が存在することを見出した。現在、関節炎の程度や病悩期、治療との関連とH2,H3のエピジェネティクス変化との関連を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
1.HMGB1の3つのアイソフォーム:全還元型、部分酸化型、完全酸化型を作成することが困難で手間取った。またHPLC法に依ったため、生理活性を調べるのに必要な十分量を作製することが出来ず、3つの型のHMGB1の細胞生理活性の解析が十分には進まなかった。2.そこで各々を識別しうるモノクローナル抗体を作製し、その抗体を使ったimmuno-affinity column chromatography を準備して、純化精製する計画である。3.ヒストンは細胞外、いわゆるDAMPとしてのヒストンは、細胞から遊離してくると、血中および組織ヒアルロン酸が結合して、その活性を中和する。これが治療用ヒストンの本態であることを明らかにし得たが、シツルリン化、アセチル化などのエピジェネティクス変化とDAMPとしての活性、すなわち細胞毒性などとの関係が重要で、これに関しては詳細に追及しえなかった。それはシツルリン化、アセチル化などの分子修飾を受けたヒストンを作製しえなかったためである。これに関しては現在検討中である。
1.HMGB1のアイソフォームを分別反応するモノクローナル抗体の作成概要の項でも述べた通り、3つのHMGB1に関してはHPLC法で準備完了したので、これを使い、ADLib (Autonomously Diversifying Library) 法(カイオーム社)を用い、おのおの3種のHMGB1に対する特異的モノクローナル抗体の作成に着手した。1-2か月で特異抗体を得られる見込みである。この抗体を用い、1)immunoaffinity column chromatography で3つのHMGB1アイソフォームを作製する。そしてその細胞生理活性を調べる。 2)さらに上述のモノクローナル抗体を用いて、各種病態の病理標本におけるHMGB1アイソフォームの発現を調べる。またこの抗体を用い、現在total HMGB1を測定しているキットを改良して、病態発現との関連を解析する。 3)さらに有害なHMGB1(還元型、部分酸化型)とのみ反応して活性を中和する抗体を用い、治療用開発を目指す。2.細胞外ヒストンがDAMPに関する研究各種病態下で血液、体液(関節液、腹水、胸水など)で出現するヒストンのエピジネティクス修飾をimmunoblot 法で解析し、ヒストンH3, H4の量と質的変化、ダイナミズムを解析する。また申請者らが明らかにしたヒアルロン酸、トロンモジュリンのヒストン結合・中和活性とエピジェネティクス修飾を受けたヒストンの親和性、中和度を解析する。
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