研究課題
平成26年度は、がんの骨転移に高頻度に合併し、がん患者のQOLと生命予後を著しく悪化させる骨痛誘発における骨細胞の役割について検討した。骨細胞は機械的負荷を感知するメカノセンサーとして骨改造を調節する細胞である。しかし骨細胞がそのほかの機能を有するかについては不明である。我々は骨細胞が形態的に神経細胞に類似し、神経と同様のネットワークを形成すること、また骨細胞が多数存在する皮質骨に痛覚神経が分布することに着目し、骨細胞が痛覚神経の興奮、そして骨痛の誘発過程において果たす役割について検討した。共焦点レーザー顕微鏡による観察から、骨において痛覚神経と骨細胞とが密接に連絡し合い、骨細胞と痛覚神経細胞との共培養により両者の間に機能的連携が存在することが確認された。痛覚神経細胞興奮の指標である細胞内イオン化カルシウム流入は酸刺激により上昇し、骨細胞との共培養でカルシウム流入は増強されたが、コネキシン43の活性阻害、あるいは遺伝子発現抑制により増強効果は消失した。ヒト多発性骨髄腫による骨痛モデルにおいて、コネキシン43阻害剤は骨痛を有意に抑制した。骨に存在する細胞の95%を占める骨細胞は隣在する痛覚神経と細胞間コミュニケーションを確立することにより神経細胞の興奮を増強し、骨痛を増悪することが示唆された。骨細胞と痛覚神経との細胞間コミュニケーションはがん患者の骨痛を管理する上で重要な治療ターゲットになると期待される。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、まず癌性骨痛の誘発における骨細胞の役割と分子メカニズムを解明した。そして、コネキシン43阻害剤は骨痛を有意に抑制したことから、骨細胞と痛覚神経との細胞間コミュニケーションはがん患者の骨痛を管理するための治療標的となり得る可能性を示した。また、骨痛の誘発における酸性環境の役割を明らかにするために破骨細胞特異的Tcirg1ノックアウトマウスの作製を進めている。現在Tcirg1(flox/flox)マウスを作成することに成功し、マウスの個体数も増えている。したがって多角的な視点から行われている本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
平成27年度は骨細胞選択的に細胞間連絡関与物質を欠損する遺伝子改変マウスを用いてさらに深く詳細に骨痛誘発における骨細胞と、細胞間連絡関与物質の役割について検討を進め、骨痛緩和薬物の開発につなげたいと考えている。また引き続きTcirg1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製を行う予定である。
平成26年度に予定していたマイクロアレイ受託解析のサンプル作製が年度内に間に合わなかったため、受託解析を行わなかった。そのため次年度使用額が生じた。
平成27年度に再度サンプルの作製を行い、マイクロアレイ解析を行う予定である
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