研究実績の概要 |
破骨細胞の前駆細胞(破骨前駆細胞)は、単球・マクロファージ系の細胞であり、骨髄、脾臓および血液から歯槽骨の骨表面に動員され、破骨細胞に分化すると考えられている。しかし、破骨前駆細胞が炎症条件下でどのように変化するか詳細は不明である。 本研究では、骨髄、脾臓、血液中の破骨前駆細胞の細胞表面マーカーの解析をし、LPS投与がこれらにどのような影響を及ぼすか解析した。マウスの骨髄、脾臓、および血液より細胞を採取し、磁性体結合抗CD11b抗体を用いてCD11b+とCD11b-細胞に分離した。これらの細胞をRANKLおよびM-CSFの存在下で培養し、破骨細胞分化能をTRAP染色にて評価した。また、LPS(500μg/kg)を腹腔内投与し、同様の実験を実施した。さらに、CD11b以外にも、CD14、c-FmsとRANKの抗体を用いて同様の解析をおこなった。CD11b磁性体標識抗体を用いて分離したところ、骨髄、脾臓、血液の細胞の破骨細胞分化能は異なることが判明した。同様に、RANK,CD14,c-Fmsの抗体を用いて解析したところ、c-Fmsは破骨前駆細胞に共通のマーカーであり、CD11bやCD14の発現は組織によって異なることが明らかになった。生理食塩水投与では分化しなかった骨髄や脾臓のCD11b+細胞が破骨細胞に分化した。そこで、これまで解析した破骨前駆細胞に共通して発現していたc-Fmsの発現レベルを解析した。LPS投与マウスから分離した骨髄と脾臓のCD11b陽性細胞では、明らかにc-Fmsの発現レベルが上昇していることがわかった。以上の結果より、骨髄、脾臓、血液には、異なるタイプの破骨前駆細胞が存在することが明らかになった。さらに、LPS投与によってCD11b陽性の新しいタイプの前駆細胞、炎症タイプが出現することを見いだした。すなわち、炎症性骨破壊には炎症タイプの破骨前駆細胞が関与している可能性が考えられる。
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