研究課題
粘膜組織における細菌感染による慢性炎症の誘発・持続には、ヘルパーT (Th) 細胞が重要な役割を果たし、特にTh1やTh17細胞などの炎症性細胞が病態悪化に関わっている。一方でこれら炎症性細胞に対し、炎症を抑制する細胞も誘導され、行き過ぎた炎症性細胞の活動を抑制し、炎症反応を終息させるように働く。粘膜組織における炎症抑制には、抑制性サイトカインであるIL-10が深く関わっていることから、IL-10を産生するFoxp3陰性Th細胞(Tr1細胞)の分化制御機構を明らかにすることが重要であると考えられる。本研究では、ナイーブ細胞からTr1細胞の分化条件の最適化について検討していたが、このTr1細胞がIFNgも産生してしまう、すなわちTh1様の性質を持ってしまうことに気づき、IFNgが産生されないような条件を検討し最適化をはかった。その上でTr1分化に関わる経路を探索し、PI3K経路が分化を正に制御することを見出した。また、Tr1細胞(Foxp3陰性IL-10産生Th細胞)をin vivoで同定するために、すでに飼育を開始していた、Foxp3発現細胞表面にヒトCD2分子を発現するマウス(Foxp3<hCD2><CD52>マウス)およびIL-10産生細胞に蛍光分子(Venus分子)を発現するマウス(IL-10 Venusマウス)の交配をはじめ、実験に必要な数を確保するため飼育しているところである。
2: おおむね順調に進展している
Tr1分化において、PI3K経路がその分化を正に制御していることを見出したが、その詳細な解析に向けてシグナル解析に必要なウェスタンブロット法に加え、フローサイトメトリーによるシグナル分子のリン酸化解析法も取り入れ、条件設定を終えている。また、in vivoにおけるTr1細胞の検出のためのマウスの作製も順調であり、Tr1細胞の機能解析に必要な腸炎モデルの作製も行っており、in vivoにおける解析ができる状態にある。
今後は、Tr1分化に関与するPI3K経路の下流分子の同定を行う。また、in vivoにおけるTr1細胞の機能解析については、当初は細菌感染マウスモデルを用いる予定であったが、施設上の問題で感染体を用いたマウス実験ができないため、粘膜組織における炎症ということで腸炎モデルを用いて解析を行うことに変更して実験を行うこととする。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 23238
10.1038/srep23238.
http://www.tmd.ac.jp/mim/