研究課題/領域番号 |
26293402
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
勝又 明敏 朝日大学, 歯学部, 教授 (30195143)
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研究分担者 |
藤田 廣志 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10124033)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 情報工学 / 歯科 / 放射線学 / 画像診断 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
平成27年度 研究実績の概要 本研究の目的は、歯科臨床での利用が増加しているデジタルパノラマX線撮影および歯科用コーンビームCT(CBCT)の画像データを解析しすること。これらのデータから、骨粗鬆症や動脈硬化などの全身疾患、および歯の欠損・埋伏・歯周病などに関する歯科疾患の情報を取り出すコンピュータ診断/検出支援(Computer-Aided Diagnosis/Detection: CAD)システムを開発することにある。また、解析されたデータを分類して格納し、利用者が必要とする情報を検索できる歯科医療情報ライブラリを検討する。 平成26年度においては、パノラマ画像を標準化するアルゴリズムおよびパノラマX線画像に適用する各種CADアルゴリズムの検討をおこなった。パノラマ画像から骨粗鬆症をスクリーニングするCADの開発においては、これまでに検討してきた下顎皮質骨の厚さの自動計測に加え、骨粗鬆症の進行にともない粗造となる皮質骨の形態変化を評価するアルゴリズムを開発した。 平成27年度には、これまでに蓄積したパノラマX線画像のライブラリから、歯科放射線専門医が骨粗鬆症の疑い程度のクラス分類をおこなった症例データベースを作製した。同データベースの症例を、本仮題で開発したアルゴリズムを備えたソフトウエアで処理し、CADによる骨粗鬆症スクリーニングの検出精度を検討した。さらに、平成26年度にひき続き、歯科用CBCT画像から歯を抽出するアルゴリズム開発のためのコーンビームCT画像データ収集、および画像濃度(CT値)の標準化について基礎的検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線画像の収集および使用に関する朝日大学歯科学倫理委員会承認(26169号)に基づき、およびこれまで収集した10種類を越える装置のデジタルパノラマ画像を蓄積した。このうち、予備的に選抜した成人女性の画像から、3名の歯科放射線指導医が骨粗鬆症の疑い程度のクラス分類(1~3)をおこない、分類が一致した症例による骨粗鬆症疑い症例のデータベースを確立した。専門医のクラス分類結果をゴールドスタンダードとして、26年度に開発したCADアルゴリズムを用いてクラス分類をおこなった結果、CADによるクラス分類による正診率はクラス1が94.9%, クラス2が92.5%, クラス3が90.0%であった。 骨粗鬆症の可能性があるクラス1または2を検出する感度は94.5%, 特異度は 94.9%であった。 骨粗鬆症スクリーニングに関する上記の成果、頸動脈石灰化検出、および歯の検出に関するアルゴリズム開発の進捗状況を学会等で発表した。 研究の進捗状況として、当初計画と同程度の進捗であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度 パノラマおよびCBCT画像データの収集と解析を進め、画像ライブラリを拡充する。健全歯、保存・補綴治療済みの歯、および埋伏・未萌出歯を識別して抽出し、分析結果をデータ(歯式)として出力するCAD確立のための画像データベースとして、画像データと連係した歯式のゴールドスタンダードとして、アノテーション付きの画像データベースを確立する。さらに、平成27年度にひき続き、根尖、歯槽骨頂部、および歯頸部の位置座標を抽出し、歯周病の進行と関係する歯槽骨吸収の概略的な程度を自動的に評価するCADなどについて検討を続ける。歯科用CBCTに関しても、ボリューム画像データから歯を抽出して歯式を自動作成するアルゴリズムを検討する。 研究最終年度として、各種歯科疾患および顎顔面の画像から発見される可能性がある全身疾患に関する調査、地方と都市部の比較や過去の調査報告との比較、あるいはパノラマCADと歯科用CBCT画像CADの検出能の比較など、歯科医療情報ライブラリの応用について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
パノラマ画像標準化および各種CADアルゴリズムは、独立型のソフトウエアに統合して開発をおこなったが、アルゴリズム検討に時間を要したため、画像データベース収集、ソフトウエア開発、およびデータ整理を完了できず予算を使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
CAD解析をおこなうソフトウエアの開発費、および画像データ収集と解析に関わる研究補助員の人件費として使用する計画である。
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