本研究の目的は、歯科臨床での利用が増加しているデジタルパノラマX線撮影および歯科用コーンビームCT(CBCT)の画像データを解析しすること。これらのデータから、骨粗鬆症や動脈硬化などの全身疾患、および歯の欠損・埋伏・歯周病などに関する歯科疾患の情報を取り出すコンピュータ診断/検出支援(Computer-Aided Diagnosis/Detection: CAD)システムを開発することであった。また、解析されたデータを分類して格納し、利用者が必要とする情報を検索できる歯科医療情報ライブラリを検討することも目指している。 これまでに、パノラマ画像を標準化するアルゴリズムおよびパノラマX線画像に適用する各種CADアルゴリズムの検討をおこなった。また、これまでに蓄積したパノラマX線画像のライブラリから、歯科放射線専門医が骨粗鬆症の疑い程度のクラス分類をおこなった症例データベースを作製した。さらに、歯科用CBCT画像から歯を抽出するアルゴリズム開発のためのコーンビームCT画像データ収集、および画像濃度(CT値)の標準化について基礎的検討をおこなった。 平成28年度は,パノラマおよびCBCT画像データの収集と解析を進め、画像ライブラリを拡充した。歯の状態を、ア)健康な歯である、イ)部分的に金属などが詰められている、ウ)金属が被せてある、エ)歯がない(抜かれている)、オ)橋渡し(ブリッジ)になっている、の如くパターン分類し。ヒトの顔の認証などパターン認識において高い能力を発揮する深層学習技術を用いて歯の自動識別アルゴリズムを開発して識別能力のテストをおこなった。今後、X線画像から歯の状態をパターン化して認識し、画像上の歯と照合して「歯式」を決定してテキスト(コード)データを出力する本格的アルゴリズムへの展開が期待できる。
|