研究課題/領域番号 |
26293406
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
北村 知昭 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50265005)
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研究分担者 |
鷲尾 絢子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10582786)
土屋 志津 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60610053)
吉居 慎二 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90710484)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イメージファイバ内視鏡 / 炎症検出 / 炎症制御 / 再生医療 / 硬組織 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は,歯髄・根尖歯周組織疾患の治療において炎症を即時に検出し積極的に制御した後に再生組織を誘導する次世代型治療法を確立することにある.平成26年度の研究実績は以下の通りである. 【研究実績1:マイクロ内視鏡によるリアルタイム炎症検出機器の開発】 開発したシングルファイバ内視鏡のファイバ先端にグリンレンズを装着して焦点距離延長を図った.その結果,グリンレンズが無い場合と比較して焦点距離の延長が可能であることが示された.一方で,我々が共同研究を行っているフランス企業の口腔内カメラにイメージファイバを接続して根管内を観察したところ,解像度が低いながら根管内構造を観察することが可能であることが示された. 【研究実績2:MTI-IIによる炎症制御法の開発】 NF-κB阻害剤をBMP2と同時に投与したところ,骨形成が増強されることが明らかになった(Mol Endocrinol, 2014).そこでMTI-II発現プラスミドを骨芽細胞,象牙芽細胞様細胞に導入後,TNFα刺激で炎症応答を誘導し,MTI-IIの影響をリアルタイムPCR法及びウエスタンブロット法で検討したところ,MTI-IIが有意に炎症を制御することが示された. 【研究実績3:セメント・硬組織のハイブリッド再生組織誘導法の開発】 試作したバイオガラスセメントNSY-222の物理学的特性および各種細胞への影響を検討した.その結果,硬化したセメント表層にハイドロキシアパタイトが形成されること,硬化セメントは各種細胞に為害性がないことが示された(J Biomed Mater Res B, 2015).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在実施しているのは,(1).開発したシングルファイバによる内視鏡へのグリンレンズ装着による焦点距離延長,(2).化学物質の炎症制御による骨形成増強効果の検討と生体内タンパク質MTI-IIの各種細胞の炎症応答への影響,および(3).バイオガラスセメントの開発である. (1). シングルファイバ内視鏡のファイバ先端にグリンレンズを装着した結果,焦点距離の延長が可能であることが示された.同時進行で,口腔内カメラにイメージファイバを接続したところ,解像度が低いながら根管内構造を観察することが可能であることが示された. (2). NF-κB阻害剤をBMP2と同時に投与したところ,骨形成が増強されることが明らかになった(Mol Endocrinol, 2014).また,MTI-II発現プラスミドを骨芽細胞,象牙芽細胞様細胞に導入後,TNFα刺激で炎症応答を誘導しMTI-IIの影響を検討したところ,MTI-IIが有意に炎症を制御することが示された. (3). 試作したバイオガラスセメントNSY-222の物理学的特性および各種細胞への影響を検討した結果,硬化したセメント表層にハイドロキシアパタイトが形成されること,硬化セメントは各種細胞に為害性がないことが示された(J Biomed Mater Res B, 2015). 当初に予定していた進行度合はおおむね達成しているため,自己点検による評価としてはおおむね進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後,特に平成27年度における研究の推進方策は以下の通りである. (1). 内視鏡焦点距離延長が達成された次の段階として,早稲田大学の共同研究者の成果を応用し,画像に生じた歪み・ピンぼけの補正システムを作成するとともに3次元画像作成を試みる.また,共同研究を行っている日本企業が試作したマルチファイバ内視鏡プロトタイプと,我々が開発したシングルファイバ内視鏡のそれぞれで画像を取得し比較・分析する.さらに,口腔内カメラ光源にマイクロ・イメージファイバ内視鏡を接合したプロトタイプを作成する. (2). MTI-II融合蛋白質をBMPs,TNFαと共に各種細胞に作用させ,MTI-IIの石灰化能へ及ぼす影響を検討する.一方で,米国NsGene社が開発したEncapsulated Cell Therapy (ECT)を応用した目的蛋白質(GDNF)の長期分泌システムの検証を象牙芽細胞様細胞等の各種細胞を対象に開始する. (3).バイオガラスセメントが接触する組織・細胞への影響を検討する.さらに,本セメントが歯質に接着した際の封鎖性を検討する.一方で,バイオガラス配合ゼラチンスポンジの試作を開始する.すなわち,バイオガラスの性質,及び目的タンパク質を一過性ではなく中期間徐放する性質を有したスキャフォールドの作成を開始する.また,抗炎症剤として用いられているステロイド薬(ヒドロコルチゾン等)を徐放する微粒子の試作を開始する.
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