研究課題/領域番号 |
26293410
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
峯 篤史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60379758)
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研究分担者 |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80174530)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯科理工学 / 接着歯学 / 非破壊試験 / OCT / μCT |
研究実績の概要 |
「象牙質接着強さに及ぼす因子の解明」のために接着試験前の試験体の物性および界面内部の形態を,μCTおよびOCTで立体的に分析し,物性および欠損を数値化した. 1)接着試験試料の作製:う蝕に罹患していない10本のヒト抜去大臼歯の歯冠部と光重合型ボンディング材およびレジンコア材を用いて1mm×1mmの接着試験用試験体を作製した. 2)接着試験に影響を及ぼす因子の選定:接着強さに影響を及ぼす因子として,①残存象牙質長,②接着面積,③気泡,④レジンのX線吸収係数,⑤象牙質のX線吸収係数,⑥歯の違いを選定した.①残存象牙質長,②接着面積に関しては,マイクロメータを用いて試験体の象牙質部分の長さ,接着面積を計測した.③非破壊観察に関してはμCTおよびOCTを用いて試験体の界面の気泡の有無を確認した.④,⑤X線吸収係数測定:物性確認のため,µCTを用いて試験体を構成している象牙質,コンポジットレジンのX線吸収係数を測定した.⑥歯の差に関しては,歯の違いを考慮に入れるため,どの歯から試料を作製したかを記録した. 3)各種因子および接着試験の結果:10歯から作製された試験体は合計152本であった.全試験体の接着強さの平均値±SDは,33.5±17.0 MPaであり,10歯の中で,最大および最小の接着強さを示した歯の接着強さの平均±SDはそれぞれ47.0±15.8 MPa,16.5±9.9 MPaであった.気泡あり群は59本,気泡なし群は93本であり,気泡あり群と気泡なし群の接着強さの平均±SDはそれぞれ29.4±17.0 MPa,36.2±16.6 MPaであった.各因子の平均±SDは,それぞれレジンのX線吸収係数が4048.1±72.9 mgHA/cm3,象牙質のX線吸収係数が1795.9±27.0 mgHA/cm3,接着部位が3.82±1.78 mm,接着面積が0.99±0.17 mm2であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度同様,27年度も予定された実験が全て行われ,その成果についての学会発表を予定している.「OCTを用いた接着試験時のリアルタイム観察ならびに動画撮影」は予想していた動画が得られなかったが,OCTのリアルタイム観察は「臨床的接着界面評価」で実現しているため,研究遂行上の問題はないと考える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は研究期間を3年とし,第二世代接着評価法の確立に必要な「臨床的接着界面評価」と「接着試験における多面的評価」を行う.28年度は「接着試験における多面的評価」における高度統計処理を行い,学会および論文発表を行い接着強さと各パラメータとの関連を吟味する. 1.接着強さと各種パラメータの解析:昨年度,接着強さに影響を及ぼす因子として,①気泡,②レジンのX線吸収係数,③象牙質のX線吸収係数,④接着部位,⑤接着面積,⑥歯の違いを選定し,それぞれを測定した.また接着試験を行い,得られた値を各試験体の断面積を用いてMPaに変換した.本年度は本研究を継続して,「接着強さと各種パラメータの解析」を行う.具体的には,上記①~⑥のパラメータが接着試験結果に及ぼす影響を,一般線形モデルで解析する.続いて,歯の個体差を考慮した各種パラメータと接着強さの関係を評価するため,線形混合モデルを用いて統計解析を行った. 有意水準は5%とした.統計分析には統計解析ソフトウェアSPSSを用いる.データの解析にあたり,大阪大学大学院医学系医学科 新谷 歩教授に協力を願う. 2.研究成果発表:得られた結果および知見を学会にて発表し,本分野の研究者との意見交換をはかる.それら他研究者からのアドバイスも含めて,研究成果を論文にまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた実験は行ったものの,全ての内容を発表することができなかった.したがって,次年度に学会および論文発表を行う.
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた実験はすべて終了している.今後,7月開催の第125回日本補綴歯科学会学術大会において,学会発表すると共に英語論文を執筆する.英語論文作成には英文校正を必要とするため,そのための費用を計上している.
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