研究課題/領域番号 |
26293417
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 治 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60374948)
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研究分担者 |
穴田 貴久 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30398466)
増本 博 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50209459)
川井 忠 東北大学, 大学病院, 助教 (50547263)
井樋 栄二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80193465)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体材料学 / 結晶 / バイオセラミックス / リン酸カルシウム |
研究実績の概要 |
平成27年度は,生体内吸収性リン酸カルシウムが破骨細胞性吸収を受けることに注目し,埋入初期の生体反応を炎症と再生の観点で分析した.そのため,結晶相は異なるが類似形態を有するリン酸カルシウムとして材料の性状を既に明らかににしている二つの材料,HA前駆体(OCP)とその加水分解産物(Suzuki O et al. Biomaterials 2006)を用いて免疫担当細胞の反応性を解析した.これらの材料を再度調整し,X線回折とFTIR,化学分析にて所望の結晶であることが確認できた.埋入の形態として本実験では顆粒を用いた.ラットの脛骨に3mm径の骨欠損にそれぞれ,未埋入,300-500μmの顆粒状のHA前駆体,300-500μmの顆粒状OCP加水分解産物(hydrolyzate)を同用量となるように充填し,一定期間経過後に埋入組織を回収して脱灰し,HE染色,TRAP染色および炎症性細胞のマーカーとなる抗体を用いた免疫染色を行った.組織上で関心領域を設定し,新生骨の組織形態計測学による定量にて骨形成量の相異を確認した上で炎症性細胞を同定した.その結果HA前駆体がマクロファージ様細胞の集積がより高く,また,in vitroにおいてもHA前駆体がマクロファージ様細胞の遊走促進に作用することが示唆される所見が認められた.また,破骨細胞様細胞の集積も認められ,マクロファージ様細胞の遊走と関連することが示唆された.このことから,リン酸カルシウムの特定の結晶相が再生に関係すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は結晶性状のうち,結晶相の違いの影響について研究した.特に板状形態を示すHA前駆体と板状を維持して形成される前駆体加水分解産物を同一形態を持つリン酸カルシウム材料と見なし,これらの炎症性の反応と再生に至る生体反応についての所見が得られたことから,結晶形態を含む材料性状の解析に向けた基礎データ蓄積がされ,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討から組織再生の検討項目として材料に対する免疫応答を含め,性状の異なる結晶を調整し,結晶性状多様性と生体応答性を調べる.これらの解析により結晶性状多様性と生体活性発現メカニズムを明らかにし,骨再生材料開発に向けたデータを集める.今年度は特に結晶性状に関し,形態,サイズの異なる種々のリン酸カルシウムの調整を集中的に行い,これら因子の及ぼす影響を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
結晶相は異なるが類似形態を有するリン酸カルシウム(HA前駆体とその加水分解産物)の免疫細胞の反応性を明かにすることに注力し,炎症と再生を関連付けることを優先した.そのため同一結晶相を持ち形態が異なる結晶の生体応答の研究に必要な合成原料,分析試薬,抗体試薬,培養関連試薬購入を次年度へ回したため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
異なる形態の結晶の調整を進め,それらの材料を用いた材料学的性質の解析,細胞および生体の応答性の検討を進めることで経費を活用していく計画である.
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