研究課題/領域番号 |
26293419
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20193211)
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研究分担者 |
池田 やよい 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (00202903)
大谷 清 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30201974)
春日井 昇平 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70161049)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 繊維芽細胞 / 骨 / 軟骨 / 培養 / 再生医療 / 分化転換 / リプログラミング |
研究実績の概要 |
本研究は、皮膚・口腔粘膜等から容易に培養できる線維芽細胞を効率的に骨・軟骨細胞に直接分化転換することにより、将来の新しい硬組織再生療法の開発に貢献することを目指している。そこで、本研究は、(1)ヒト線維芽細胞を短期間にかつ効率的に骨・軟骨・脂肪細胞へ直接分化転換することのできる培養系、(2)分化転換により得られた細胞の生体内での硬組織形成能・造腫瘍能、(3)脱分化して得られた多能性幹細胞の長期継代培養法を検討する計画である。 既にヒト繊維芽細胞を骨・脂肪細胞に直接分化転換する可能性のある小分子化合物・増殖因子の組み合わせを見出しているが、軟骨細胞への分化効率は極めて低いのが現状である。現在、軟骨細胞への分化転換の効率を上昇させるための条件検討をおこなっている。 一方、間葉系幹細胞(MSC)など多能性をもつ成体幹細胞は、骨や軟骨に分化する能力をもち、再生医療において有望な細胞の供給源の一つと考えられている。しかしながら、MSCは、増殖能力が低く、高齢者からは充分な量を確保できない等の問題があり、臨床応用を進める上での大きな障害になっている。そこで、上記の分化転換に用いた小分子化合物・増殖因子について、MSCの長期継代培養に対する効果を検討した。ヒト骨髄由来MSCを用いて検討をおこなった結果、若い提供者由来のMSCを長期間in vitro で培養するために有用であることがわかった。 また、脂肪由来MSCは骨髄系MSCより、容易にかつ大量に採取することが可能であり、骨、軟骨、脂肪細胞に分化する能力をもつことが報告されているが、骨髄系MSCと同様、高い多分化能を保ったまま大量に増やすことが困難である。そこで、ヒト脂肪由来MSCについても、上記の小分子化合物・増殖因の効果を検討した。その結果、脂肪由来MSCを長期間培養できる小分子化合物・増殖因子を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト繊維芽細胞から軟骨細胞への分化転換効率を上昇させるための培養条件の詳細な検討をおこなったが、軟骨細胞への分化転換の効率を上昇させることはできなかった。したがって、軟骨細胞への分化転換の効率を上昇させるためには、さらに条件を検討する必要である。 本研究では、脱分化した細胞の幹細胞としての特徴を解析し、その長期継代培養法を検討することを目的としているが、骨・脂肪細胞に分化する能力をもつ細胞を大量に増やす方法がなければ、再生医療に応用することは難しい。しかしながら、骨や軟骨に分化する能力をもつ間葉系幹細胞を長期間in vitroで培養する方法は確立されていない。 そこで、繊維芽細胞の分化転換に用いた小分子化合物・増殖因子について、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の長期継代培養に対する効果を検討した。その結果、多分化能を保った若い提供者由来のMSCを長期間in vitro で培養するために有用であることがわかった。さらにこの条件は、65歳以上の高齢者から採取したMSCや脂肪由来のMSCの増殖にも有効であったが、骨・軟骨細胞への分化能力を維持するためには、さらに検討が必要であることが示唆された。 これまで多くの研究者が、多分化能を保ったMSCの長期間培養を試みて来たが、未だに成功してないMSCの長期間培養を可能にさせる本研究の成果は、MSCの臨床応用に向けて学術的価値が高いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト繊維芽細胞を骨・脂肪細胞に直接分化転換する可能性のある分子の組み合わせを見出しているが、軟骨細胞への分化転換効率を上昇させることが課題であり、引き続き培養条件の詳細な検討をおこなう。 骨髄および脂肪由来MSCについては、長期間にわたって増殖能を維持できる小分子化合物・増殖因子を見出した。しかしながら、この条件下では、脂肪由来MSC および65歳以上の高齢者から採取した骨髄由来MSCの骨・軟骨細胞への分化能力が継代とともに著しく低下することが分かった。そこで、多分化能力を維持できる培養条件を明らかにするために詳細な培養条件の検討をおこなう。 分化転換あるいは長期培養によって細胞について、石灰化・軟骨・脂肪染色等により分化状態を評価するとともに、MSCの細胞表面マーカーおよび分化マーカーの発現について解析をおこなう。さらに生体内での硬組織形成能および造腫瘍性の有無を評価するため、培養担体とともに免疫不全マウスに移植する。4~8週間後に硬組織形成能および造腫瘍能を解析する。 線維芽細胞から骨・軟骨・脂肪細胞に分化転換される過程には、エピジェネティックな制御が関わっていると考えられている。そこで、骨・軟骨・脂肪細胞分化に重要な遺伝子のプロモーター領域におけるにDNAメチル化の解析をバイサルファイト法により解析する。
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