研究課題/領域番号 |
26293420
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80242436)
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研究分担者 |
飛田 成史 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (30164007)
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔粘膜上皮細胞 / 低酸素 / 発光プローブ / 幹細胞ニッチ |
研究実績の概要 |
本学培養口腔粘膜臨床応用プロトコールに準じ、インフォームドコンセントの得られた患者の口腔粘膜組織から口腔粘膜上皮細胞の初代培養を開始、酸素濃度20(対照), 2, 0.5%で細胞を2-7日間に渡って培養した。まず、WST-8キットで細胞代謝、生細胞数計測、コロニー形成能を用いて細胞増殖能を、各酸素濃度環境下において測定した。また、p21発現と細胞周期をフローサイトメトリー(FACS)で解析し、ウェスタンブロット(WB)にて細胞周期関連タンパクの発現についても検討し、細胞老化マーカーであるβ-Gal活性の発現も確認した。さらに細胞の分化度についてFACSとWBを用いて、α6インテグリン, p75NTR, 14-3-3σの発現レベルを比較した。その結果、2, 0.5%の低酸素培養における細胞代謝は、対照群に比べ有意に低下していたが、細胞増殖能は亢進していた。細胞周期解析から、G1/G0期の細胞割合が低酸素環境では有意に増加し、さらに、細胞周期関連タンパクの発現パターンからも、低酸素環境にある細胞は細胞周期停止に陥っていることが示唆された。一方で、低酸素培養の細胞ではp21とβ-Galの発現は対照群より有意に低下していた。さらに、低酸素下の細胞はα6インテグリン, p75NTRの発現が増加し、14-3-3σの発現レベルは低下しており未分化傾向にあることが示された。以上から、低酸素環境で口腔粘膜上皮細胞におこる細胞周期停止は可逆的で、静止状態であり、細胞の未分化傾向が維持されることから、0.5-2%の低酸素培養環境は細胞増殖に有利であることが示唆された。同時にこうした低酸素環境では、HIF1αの発現が増加しており、口腔粘膜上皮細胞における低酸素応答はHIF1αを介している可能性が示唆された。併行して、群馬大学で開発した発光プローブが正常口腔粘膜上皮細胞にも適用可能なことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究計画の内容で、部分的に実施していない項目もあるが、逆に申請書に記載した仮説を実証する予定していなかった実験、解析も実施しており、トータルで見ると予定通りに実験計画は進んでいる。発光プローブによる解析では、りん光寿命の測定によって、細胞内の酸素濃度のキャリブレーションが可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
細胞の低酸素環境における動態については、新潟大学で期待していた結果が得られたので、今後はさらにsiRNAや薬理学的手法でHIF1αの細胞応答への関与について、一層の解析を行う。また、群馬大学において、より解像度の高い発光プローブの開発に成功したので、ヘテロな酸素分圧を2次元で画像化して、口腔粘膜上皮の幹細胞性の性格を維持できる至適な酸素濃度の検索につなげていく。ただ、癌細胞と異なり正常細胞においては、りん光輝度と寿命に相関がないことから,輝度だけで低酸素状態と考えることは避けるべきであるという新知見を活かしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部申請書の研究計画で実施しなかった項目があった一方で、申請書に記載した仮説を実証するために、他の異なるより安価な解析に振り替えて行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後低酸素用の発光プローブによって高解像度の画像を得て、研究を進める費用に振り替えたい。
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