研究課題
我々は以前から、IgG4関連疾患の代表的な病態であるIgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4-DS)の病変局所に浸潤するT細胞サブセットを解析しており、Th2サイトカインが IgG4-DS の特異な病態形成に関わっていることを明らかにしてきた。本研究ではTh2細胞の活性化に関わるとされているIL-33に着目して検討を進めた。IgG4-DS、シェーグレン症候群患者、健常者の唾液腺組織を用いて比較検討を行なった。mRNAの発現を検討したところ、IgG4-DSではTh2サイトカインだけでなくIL-33とST2(IL-33受容体)の発現が対照群よりも有意に亢進しており、Th2サイトカインとIL-33の発現量の間には正の相関を認めた。免疫組織化学染色で検討すると、IL-33は対照群を含めて恒常的に導管上皮が陽性であったが、IgG4-DSでは胚中心周囲にも陽性細胞が認められた。IL-33陽性細胞が存在する胚中心周囲にはST2陽性細胞も認められ、いずれの細胞の分布もTh2細胞の浸潤部位と一致していた。IgG4-DSにおいてIL-33を発現する細胞の候補としてマクロファージ(M1+M2:CD68、M2:CD163)と樹状細胞(CD11c、CD123)を考え、それらの細胞の浸潤を検討したところ、IgG4-DSではいずれの陽性細胞も認められたものの、特にCD68陽性のM2マクロファージの胚中心周囲への浸潤が著明であった。さらに、二重蛍光免疫染色を行なったところ、IL-33陽性細胞はCD68およびCD163陽性細胞と局在がほぼ一致していた。また、IL-33陽性マクロファージが存在することはフローサイトメトリーによる検討でも確認できた。以上より、M2マクロファージがIL-33を介してTh2細胞を活性化し、IgG4-RDに特徴的なTh2依存性の病態形成において重要な役割を演じていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の研究成果はClinical Immnologyをはじめ、数報の論文が今年度に出版された。今年度の研究成果は、次年度以降の研究に繋がるものと考えられる。
1)IgG4-RD 患者の血清IL-33 値の測定(ステロイド治療前後)気管支喘息患者では血清IL-33 の上昇が認められ、さらにステロイド治療により正常化することが報告されている。本研究でも、IgG4-RD 患者のステロイド治療前後または治療途中での再発時に血清IL-33 値をELISA 法にて測定し、IgG4 以外のバイオマーカーとしての有用性について検討を行う。さらに、罹患臓器(唾液腺など)との発現量の相関についても検討する予定である。2)唾液腺および血液からのIL-33 産生細胞の抽出+IL-33 産生能の評価IgG4-DS、SS 患者および健常者の唾液腺および血液から、IL-33 産生細胞(マクロファージなど)をセルソーターにて抽出し、単離培養したそれらの細胞からIL-33 産生能を評価する。また同一患者のリンパ球との共培養にて培養上清中のIgG4 濃度を測定し、IgG4-DS の病態形成に関与する細胞を同定する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (3件)
Clinical Immnology
巻: 156 ページ: 9-18
10.1016/j.clim.2014.10.008
Arthritis and Rheumatology
巻: 66 ページ: 2892-2899
10.1002/art.38748
International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery
巻: 43 ページ: 1276-1281
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Journal of Autoimmunity
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