研究課題
今年度は自然免疫に必須な病原体センサーであるToll様受容体(TLR)に注目し、IgG4関連疾患におけるTLRファミリーの発現と機能について検討を行った。IgG4関連疾患 6例、唾石症3例、健常者3例の顎下腺においてDNAマイクロアレイを行い、自然免疫関連分子について網羅的解析を行った。さらに、TLRファミリーの中で発現亢進を認めたものについては、real-time PCR法および免疫組織化学染色法にてバリデーションを行った。最後に、TLRトランスジェニック(Tg)マウスを作製して各臓器の組織解析および血清IgG1(ヒトのIgG4に相当)値について検討を行った。その結果、DNAマイクロアレイおよびバリデーションでは、IgG4関連疾患はTLR7のみ有意な発現亢進を認め、M2マクロファージと局在が近似した。最近の報告では、TLR7アゴニストでマクロファージを刺激すると、Th2活性化因子であるIL-33が産生されることが示唆されていることから、TLRファミリーとIL-33との関連について検討を行ったところ、TLR7のみIL-33と正の相関を認めた。そこで、ヒト(hu)TLR7 Tgマウスを作製して同週齢の野生型マウスと比較検討したところ、huTLR7 TgマウスのみIgG4関連疾患の好発部位である顎下腺と膵臓でリンパ球浸潤と線維化の亢進を認めた。さらに、TLR7アゴニスト(R848)で刺激したhuTLR7 Tgマウスは血清IgG1値が刺激前と比べ有意に増加した。これらの結果から、TLR7による刺激が病変局所のM2マクロファージを活性化してIL-33の産生を促進させることで、IgG4関連疾患に特徴的なTh2優位な病態を形成していることが示唆された。また、huTLR7 Tgマウスは世界初のIgG4関連疾患モデルマウスになり得る可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
IgG4関連疾患ではTLR7の発現が亢進しており、TLR7トランジェニックマウスではIgG4関連疾患の臨床所見と類似していることを見出した。本研究の最終目的である世界初のIgG4関連疾患モデルマウスの確立に向けて、研究は順調に進展している。
今後はTLR7トランジェニックマウスの各臓器について免疫学的な検討を行い、自然免疫細胞を標的とした新規治療へつなげていく予定である。
研究が予定より順調に進んだたため、予定していた抗体やプライマーの使用量が少なかかったため。
最終年度は、モデルマウスの作成・評価に予算を費やし、本研究の論文作成にもさらに力を注ぐ予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
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