本研究では、放射線照射後に再発する口腔がんにおいて誘導される骨髄由来CD11b+細胞がどのような分子メカニズムにおいて腫瘍内に引き込まれ、血管を形成し、さらには再発を促進しているかについて、フローサイトメトリーを用いた細胞生物学的解析や分子生物学的解析を行ってきた。さらに単球からマクロファージへの分化誘導実験やマウスの骨髄細胞より精製した単球細胞やマクロファージを用いて口腔がんマウスモデルにおける解析を行い、腫瘍の再発や血管の再形成における役割およびマクロファージ分化機構との関連を調べた。本年度も昨年度に引き続いてマウスモデルを用いて口腔がん放射線照射後において時系列で腫瘍を採取し、免疫組織学的解析によってCD11b+細胞が照射後に低酸素の拡大とともに誘導され、さらにmyeloid-derived suppressor cells (MDSCs)やM2マクロファージへの分化が腫瘍内で誘導されることを見出した。またM2マクロファージとマトリジェルをマウスに共移植したところ、有意に血管形成を促すことがわかった。さらにヒト臨床検体を用いた免疫組織学染色において同一患者より採取した未治療と放射線治療後の再発腫瘍において解析したところ、再発腫瘍において有意にCD11b細胞とCD206細胞の含有率が高いことがわかった。これまでの結果から放射線照射後の口腔がんにおいて腫瘍内に誘導された骨髄CD11b+単球細胞がM2マクロファージに分化し血管の再形成を誘導することで再発が促進されていることが示唆された。
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