研究課題
生体には各臓器間のネットワークシステムが存在し、内分泌系・神経系がそれを担っており、生体反応を制御している。骨代謝における血管系の主な役割は、骨代謝に関わる物質を骨リモデリング部位に運搬するという内分泌系制御の補助的役割と考えられてきた。しかし近年、血管内皮細胞の産生するサイトカインが骨関連細胞に作用することが明らかになり、血管内皮細胞が骨代謝を制御する可能性が示唆されている。われわれは血管内皮細胞が産生するnetrin-4に着目し骨関連細胞に対する作用を解析し、骨粗鬆症モデルマウスにおける解析を行った。細胞を通過させないTranswell plateを用いて、血管内皮細胞株UV♀2を上部wellに、RANKL・M-CSF存在下で骨髄細胞を下部wellに播種し共存培養系とした。本系において抗netrin-4抗体を添加する実験、あるいはnetrin-4をノックダウンした血管内皮細胞との共存培養を行った。骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1あるいはマウス骨髄由来破骨細胞にrecombinant netrin-4を作用させて分化能を調べた。さらに、RANKL誘導性の骨粗鬆症モデルマウスにrecombinant netrin-4を投与し骨形態計測を行った。共存培養系において破骨細胞分化が抑制され、抗netrin-4抗体を添加することで分化抑制が解除された。また、netrin-4をノックダウンした血管内皮細胞との共存培養で破骨細胞分化抑制が解除された。recombinant netrin-4はTRAP陽性細胞数および破骨細胞分化マーカー発現を抑制させ、骨芽細胞においてALP活性を低下させた。さらに、骨粗鬆症モデルマウスにおいてrecombinant netrin-4を予防投与したところ、破骨細胞の抑制を介して骨量減少を防いだ。血管内皮細胞から産生されるnetrin-4は破骨細胞分化を抑制すること、netrin-4は破骨細胞数を抑制して骨量低下を予防することが示唆された。
3: やや遅れている
Netrin-4の解析をすすめることができたため。
Netrin-4の骨芽細胞に対する作用の解析について進行中である。一方で、神経系と骨の相互作用の解析をすすめるべく、レトロウイルスによる骨芽細胞への蛍光(緑色)遺伝子と神経細胞への蛍光(赤色)遺伝子導入を行う予定である。
分担者に配分した金額50万円については、分担者にサンプルを渡すことがまだできておらず、使用を次年度に繰り越すこととしたため。残金については、消耗品が予想以上に必要よりも少なく済んだため。
分担者にサンプルを渡してμCTの解析を行っていただく。残金は消耗品で使用予定である。
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FEBS Letters
巻: 588 ページ: 2262-2269
10.1016/j.febslet.2014.05.009. Epub 2014 May 17.