研究課題/領域番号 |
26293433
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福本 恵美子 東北大学, 大学病院, 助教 (10264251)
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研究分担者 |
福本 敏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30264253)
齋藤 正寛 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40215562)
阪井 丘芳 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90379082)
保住 建太郎 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (10453804)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 歯胚 |
研究実績の概要 |
動物モデルを用いた歯の再生は、一部可能となってきているが、適切な形態を有する歯の再生には至っていない。そこで、歯の前後(近遠心)、左右(頬舌)の決定機構を解明する。これまでの研究で、乳歯歯髄細胞からのiPS作成、iPS細胞からエナメル芽細胞、象牙芽細胞の誘導技術を開発し、細胞ソースの問題(胎児細胞の利用や、限られた細胞数)については解決できたが、適切な器官の形態形成機構や、大きさの決定機構に関しては十分に理解されておらず、そのコントロール技術も存在しない。 そこで我々は、胎生14日のマウス歯胚を用いてmRNAを抽出後、マイクロアレーを用いた包括的な遺伝子スクリーニングを行なった。また、マイクロアレーのデータ解析には、Ingenuity Pathway Analysis (IPA)を用いたクラスター解析を行い、歯の形成に重要であると考えられる新規の分子群(少なくとも20種類以上)の同定に成功した。 歯の大きさに異常をきたす外胚葉異形成症モデルマウスにおいては、歯胚の大きさ決定にHippoと呼ばれる新たな細胞内シグナル分子が関わっていることを見いだした。Hippo関連分子(Mst1/2、Ww45、Mob1A/B、Lats1/2、YAP等)の歯胚発生過程における発現と、歯胚上皮の増殖の左右差における役割について検討を行なった結果、Mst1/2は歯胚上皮細胞の細胞増殖を制御していることを明らかにした。その一方で、発生の後期においてはエナメル芽細胞の分化に関わっており、1分子で時期の違いにより2つの機能(細胞増殖と細胞分化)を制御していることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
胎生14日のマウス歯胚を用いた包括的な遺伝子スクリーニングは、既に我々が15年以上も前に行なってきたが、最新のスクリーニングシステムを併用することにより、これまでは同定不可能であった新たな分子の同定に成功した。すでにこの一部の新規分子においては、歯の形態形成や機能維持に重要であることを見いだし、その分子シグナルや結合蛋白の同定、さらにはエナメル芽細胞の分化における役割の同定にも成功した(未発表)。 後半のHippo関連分子の解析においては、Mst1/2が歯胚上皮において左と右側で時期特異的に発現が異なることを見いだし、またMst1/2の結合分子の同定、細胞内局在の制御機構等、歯のみならず他の組織にも共通する分子機能を発見することができた。つまり2年目(平成27年度)で実施予定であった解析についても、一部の分子においては完了する等、予想以上の進展が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、前後、左右差決定候補因子の発現誘導(抑制)ベクターの作成と歯原性上皮細胞株へ導入を行い、細胞増殖に及ぼす影響をMTTアッセイ、あるいはBrdU取込み能による増殖への影響の検討、唾液腺胚の器官培養を用いた候補遺伝子の器官発生に及ぼす影響の検討、Hippo関連分子発現誘導(抑制)ベクターの作成と歯原性上皮細胞株へ導入し、細胞増殖への影響についてのさらなる検討、さらには、歯胚3次元器官培養、スライス培養をもちいた歯胚形態形成誘導法の開発へと進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、マウスを用いた実験を主に行い、in vitroよりもin vivoの系が多かったことから、酵素などの高額な物品の購入が計画よりも少なかったため、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、in vitroの系が多くなるため、酵素・抗体類の高額な試薬の使用が当初の計画よりも増えることが予想されるめ、今年度の残金を含めた予算の執行が必要となると考えられる。
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