研究課題/領域番号 |
26293435
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岩本 勉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (90346916)
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研究分担者 |
長谷川 智一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 講師 (50274668)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 / パネキシン / ギャップ結合分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、歯の発生過程における前象牙芽細胞の役割ついて解明することを目的とする。これまで象牙芽細胞が分化する過程において、前象牙芽細胞はその運命を決定する重要な役割を担っているのではないかと考えられてきたが、その詳細な機能については、多くの点が不明のままであった。われわれは前象牙細胞特異的に発現する分子として、Panx3を同定した。歯原性由来間葉系幹細胞を用いた実験において、Panx3は細胞内のATPの排出に関わっており、このことが細胞内のエネルギーセンサーとして重要な役割を担っているセリン・スレオニンキナーゼ(セリン・スレオニン酸化酵素)の一種で代謝物感知タンパク質キナーゼファミリーのメンバーであるAMP活性化プロテインキナーゼが活性化されることを見出した。 歯原性細胞株にPanx3を過剰発現するとATPの排泄が増え、さらに細胞増殖の停止を引き起こした。さらにAMPKの活性化も引き起こされることから、AMPKの活性化が歯原性細胞株の増殖への影響を検討したところ、AMPKの活性により細胞増殖の抑制が観察された。 これらの結果から、Panx3の活性化はATPの排泄と同時に細胞内でAMPKの活性が起こり前象牙芽細胞の細胞増殖の停止に関わっていることが示唆された。今後はさらにこれらの分子メカニズムと分化に及ぼすメカニズムの検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Panx3は歯の発生過程において、前象牙芽細胞特異的に発現する分子である。それゆえ歯胚の間葉組織に占める割合は極めて低いこともあり、コンタミネーションのないPanx3陽性細胞の単離は難しい。過剰発現系はアーティフィシャルな環境になるため、可能であればクルードな状況で発現したPanx3陽性細胞の単離を行いたいと考える。ギャップジャンクションは細胞外と細胞内のコミュニケーションで重要な役割を担うチャネル分子であり、その構造はPanxsもconnexinsも類似しているが、なぜ前象牙芽細胞から象牙芽細胞へと最終分化する過程で、Panx3からconnexinへ切り替えが必要とされているのか、このそれぞれの機能を明らかにするためにはPanx3陽性細胞の単離は重要なステップである。
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今後の研究の推進方策 |
歯の発生過程で前象牙細胞特異的に発現するPanx3の発現陽性細胞の単離を継続して試みる。細胞数をさらに検討することと、陽性細胞をどのようにして増やすかが重要なポイントになる。これまでの予備実験で前象牙芽細胞は基底膜との相互作用が存在していることから、様々な基底膜分子をコーティングしたdishを用いて、Panx3がより誘導される分子を検索した。これまでのところ、Lamininをコーティングした場合によりPanx3が誘導されることが明らかとなってきたため、そのような条件下で陽性細胞の単離を回収を試みたい。また、思うように細胞数が集まらない場合は、Knockdown法によって新たな分子機構の解明をPanx3およびconnexinのそれぞれのギャップ結合の特徴から相互作用分子の特性から見出していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも若干の遅れが出ているため残額の発生がでた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度で進捗状況の改善が見込めるため次年度に使用予定である。
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