研究課題/領域番号 |
26293448
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研究機関 | 鳥取看護大学 |
研究代表者 |
荒川 満枝 鳥取看護大学, 看護学部, 教授 (00363549)
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研究分担者 |
岡山 加奈 大阪市立大学, 看護学研究科, 准教授 (20549117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 看護技術 / 薬剤耐性 / 免疫 / 手指衛生 / 常在細菌叢 |
研究実績の概要 |
薬剤耐性菌の出現は世界的な問題である。手指衛生は院内感染防止の最重要ポイントで、上下水道事情が悪い諸外国では、流水による手洗いが困難な場合も多く、薬剤に頼らざるを得ない状況もある。本研究では、長期間手指衛生に薬剤を使用してきた看護師の手指表面の常在細菌について日本とフィリピン共和国で調査し比較するものである。 フィリピン共和国において、協力者の手指の常在細菌のサンプルを採取し、その細菌分布を検討するための連携研究者の獲得と倫理委員会承認等の体制づくりは、平成27年度に完了させた。これにより初年度より平成28年度までに、日本及びフィリピン共和国でのサンプル採取は概ね完了した。日本のサンプルについては種の同定等の解析まで完了し、細菌の種のレベルでの看護師と学生での違いについて明らかな結果が得られている。一方、フィリピンでのサンプル採取は、平成27年度に行ったパイロットスタディから方法を確立させ、平成27年度から28年度にかけてサンプル採取を概ね終了した。その後手順に従って、培養、分離、グループ分け、PCRによるDNA増幅・精製およびシーケンス解析までは終了したが、種の同定まで至ったのは一部にとどまっている。この一部の比較から、学年間の違いや日本との違いも見られている。 結果が出揃うに伴い、研究の方向性や拡大について、フィリピンの連携研究者との細やかな意思疎通を行っている。マニラへ赴いて連携研究者と行った成果検討では、解析方法の確認を行いながら、今後詳細に看護師と学生、学生間の比較を行い、論文発表、国際学会報告へと進めることとした。日本国内では一部の研究成果について発表を行うことができた。 また、フィリピンでの研究に関して情報を得たマレーシアの研究者(看護教員)より研究協力の申し出があり、現地に出向き実験の指導やサンプル採取の検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィリピン共和国でのサンプル採取については、平成26年に連携研究者のリクルート、平成27年度の倫理委員会承認を経て、平成28年度までにサンプル採取は概ね完了した。比較する日本のデータ取得に関しては、平成26年度に倫理委員会承認とサンプル採取を概ね終えた。 採取した両国のサンプルは、培養、分離、グループ分け、DNA増幅・精製およびシーケンス解析を経て、データベースを使って種の同定を行い、これから統計解析を行って各群の比較を行うことになる。うち日本のサンプルについては、国内比較の統計解析まで完了している。フィリピンのサンプルについては、シークエンス解析までは全サンプル終了したが、種の同定まで終わったのは一部に留まっているため、これを終えて国内・日本との比較を行う必要がある。日本の追加サンプル採取については、倫理委員会の承認は経ているため実施可能であるが、研究体制が整わず実施に至っていない。 フィリピンの連携研究者とはSkype接続を試み成果検討の場を持つことができたが、接続状況が良好とは言えず、現地でのミーティングに関する打ち合わせを行うにとどまった。送受信の容量の問題ではないかと考えられ、今後検討を重ねる必要がある。現地に赴いての打ち合わせでは、得られている結果から、興味深い結果が得られそうであるため、学会発表や論文発表の話が出ている。 また、フィリピンでの研究実施に関して情報を得たマレーシアの研究者(看護教員)より研究協力の申し出があった。実験研究の経験のない看護教員であったため、その人物の知識や研究能力等を慎重に吟味した上で、共同可能と判断し、実験の指導やその手技からサンプル採取の方法の検討を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、フィリピンのサンプルの種の同定を最優先課題としなければならない。結果が得られれば、まずフィリピン国内での比較を行い長期にわたる擦式アルコール製剤という手指衛生の効果について考察する。さらに日本の結果と比較し、新たな知見が得られることを期待したい。 得られた結果については、再び現地に赴き連携研究者と入念に成果検討を行うと共に、学会発表や論文発表を行いたい。国内では日本環境感染学会、日本看護科学学会、日本菌学会等を中心に発表する予定で、海外の学会については現在検討中である。また可能であれば、サンプルを採取させていただいた海外施設でもプレゼンの機会が持てないか交渉したいと考える。また、論文化については英語での発表を考えている。海外の連携研究者には、結果に関する討論に参加いただいて、フィリピン国内で活用いただく方策とすると同時に、雑誌の検討、論文の英語の修正に貢献いただく。 得られたサンプル、データの保存など処理を丁寧に行うことは、サンプルを提供くださった協力者へ報いるためにも重要だと考える。特にサンプル保存は費用と手間がかかるが、重要課題としたい。さらに今後、マレーシアでの研究拡大を見越して、打ち合わせやプレ実験を含めた実験指導も行いたい。 外国を巻き込んだ研究であるため、渡航に関しては特に各国の文化や宗教、国政の状況も十分に考慮しながら研究を進める必要があると考えている。国際状況が厳しい時世でもあるため、研究による看護研究者同士の連携を深めることは、研究者として重要な任務とも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属する大学の近辺で実験研究補佐可能な人材の臨時雇用がなかなか難しく、それを補うための物品や分担研究者や連携研究者の往来のための予算としていたが、研究者同士の日程調整の限界から、協力いただける日数が限られ余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度も人材雇用は難しいと考えられるため、分担研究者に研究代表者の所属施設に出向いていただき、実験の協力をお願いするための旅費等を計上する。分担研究者の施設でも実験の補助を行っていただくため、そのための物品費も計上する。
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