研究課題/領域番号 |
26293457
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研究機関 | 公益財団法人労働科学研究所 |
研究代表者 |
松元 俊 公益財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (20342686)
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研究分担者 |
佐々木 司 公益財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (10260134)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 夜勤中仮眠 / 長時間夜勤 / 看護 / シフトワーク・チャレンジ / リスクコミュニケーション |
研究実績の概要 |
12時間および16時間2交代勤務に従事する看護師の夜勤負担を軽減する仮眠条件を明らかにするため、まず仮眠取得実態についてヒアリング調査を行った。12時間以上の長時間夜勤では、3交代からの勤務制の変更にともない1時間半から2時間の仮眠が導入されていた。この仮眠時間を延長するには、交代でとられる仮眠では業務変更がなされない限り2時間以上の確保が難しいことが示された。そのため次善策としては仮眠の質の改善が求められるが、ヒアリング結果と過去の知見から仮眠時間にかかわらず実際の就床時間は6~8割程度に減ることが確認された。これは仮眠場所までの移動、身支度に加えて仮眠環境、仮眠取得時刻の影響によるものであった。また、仮眠がとれるのは、夜勤の長さに関係なくまとまった1時間半(臥床時間1時間程度)が要求された。短時間の仮眠でも眠気抑制効果が確認されているが、実際には仮眠にあてられる時間が30分以下になる場合は、横になっても睡眠をとっていなかった。それは、睡眠慣性とともに起床できない不安、寝た気持ちがしないという心理的な理由が示された。また、仮眠を前提とした部屋や寝具などの整備への不満も多く聞かれた。睡眠環境の整備がなされていないことは、夜勤中の仮眠の有効性やその対策への共通認識がなく、夜勤負担軽減としての優先順位が低いことのあらわれともとれた。睡眠の質に影響する仮眠取得時刻の決め方は、看護方式や経験によって異なっていたが、3人夜勤であれば2番目もしくは2-4時の開始が好まれた。以上の結果は、看護労働での夜勤中の仮眠時間やとり方は勤務条件や個人特性による経験的なものであり、夜勤・交代勤務の生理的、心理的な問題なについては考慮されていなかった。そこで、仮眠取得条件の改善のために、夜勤・交代勤務のリスクを学習し、共通認識を持つための仕組みとして「シフトワーク・チャレンジ」を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
看護労働において16時間2交代勤務の導入が実際に進んでいるものの、夜勤対策として3時間の休憩時間確保と仮眠時間延長を行っている病棟、もしくは仮眠時間延長の介入を行える病棟の選定と協力が得られていない。そのため、ヒアリングによる実態把握と、介入実験よりも先に仮眠を含む夜勤・交代勤務条件を改善する仕組みの構築を行った。
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今後の研究の推進方策 |
看護師の長時間夜勤における主な負担軽減策が夜勤中の仮眠であることはヒアリング調査によってあらためて明らかになった。しかし、具体的な仮眠取得条件の設定は経験則に従って決められていることから、夜勤中の仮眠の重要性とその効果が共通認識となるような仕組みを拡充することをベースとして、引き続き本研究の主目的である多様な勤務形態における効果的な仮眠取得条件を明らかにするための介入実験実施に向けて取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画において、現場介入実験用に予定していた機器の購入が、実験実施の遅れに伴い延期となったこと。それに対して、ヒアリングを含む情報収集のため旅費が増えたことで、計画していた使用額に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画にある現場介入実験の受け入れ先を選定するために、ヒアリング調査用の旅費が計画よりも増えており、遅れているが当初の計画の通り実験用の器機購入および実験実施費用に充てられる。器機購入が先送りになったため、翌年に繰り越されることで生じる費用の不足分については、必要器機の調達先や他の費目で調整する。
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