研究課題/領域番号 |
26293458
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
西岡 みどり 独立行政法人国立国際医療研究センター, 国立看護大学校, 教授 (60462785)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療関連感染 / サーベイランス / 感染管理 / 感染防止技術 / 末梢静脈カテーテル / 薬剤耐性緑膿菌 / 透析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は1)末梢静脈カテーテル関連感染、2)多剤耐性緑膿菌multidrug resistant Pseudomonas aeruginosa (MDRP)、3)透析関連感染の各サーベイランスを活用して7つの研究項目(1)~(7)を行い、有効な感染防止ケアを明らかにすることである。平成26年度は1)末梢静脈カテーテルに関する(1)~(3)と、2)MDRPに関する(4)(5)を予定通り実施した。3)透析に関する(6)(7)は次年度以降に予定していたが、前倒しで(6)を開始した。 (1) 末梢静脈カテーテルを3日毎に「定期交換」していた1施設で「静脈炎などのイベント兆候出現まで刺し換えない方法(イベント交換)」を導入し、イベント発生率の比較と(2)費用最小化分析を実施した。さらに(3)「イベント交換」下のイベント発生ハザードを生存時間解析により明らかにした。 (4)1施設の2剤および3剤耐性緑膿菌保存株の遺伝子解析について、計画ではPFGEによる予備解析で絞った一部の菌株に全ゲノム解析を実施予定だったが、PFGEをやめ全ゲノム解析を対象株すべてに実施しST235とST357のクラスターを特定した。3剤耐性が多かったST235の系統樹解析と薬剤耐性遺伝子解析により同一由来株を推定した。(5)同一由来株群を症例群、散発株群を対照群として診療録調査を行いロジスティック回帰分析によりMDRP伝播ケア要因を特定した。 (6)申請時は透析バスキュラアクセスに限定したサーベイランスの調査を計画していたが、他大学研究者がバスキュラアクセス部の消毒に関する全国調査を開始したとの情報を得て、透析関連サーベイランスに拡大した内容に計画を変更し開始した。 すべての研究項目は倫理審査の承認後に開始した。文献レビュー、病院視察、関連学会にて国内外の最新情報を収集した。成果の一部を国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度に予定していた5つの研究項目をすべて実施した。さらに平成27年度に予定していた透析関連サーベイランスを活用した研究を前倒しで開始した。したがって、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は以下のように進める予定である。 1)末梢静脈カテーテル関連感染サーベイランス:平成26年度に実施した「イベント交換」の(1)安全性と(2)経済性、および(3)リスク因子に関する研究成果を取りまとめて公表する。また、明らかにしたリスク因子をもとに新たな感染防止ケアを考案し、効果を検証する介入研究を検討する。 2)MDRPサーベイランス:平成26年度に実施した薬剤耐性緑膿菌の全ゲノム解析と診療録調査により特定したST235株伝播リスクに関する研究成果を取りまとめて公表する。また、ST357株についても同様の研究を検討する。明らかにしたリスク因子をもとにMDRP伝播防止策を考案する。 3)透析関連感染サーベイランス:計画変更が余儀なくされ、予定より早く平成26年度に前倒しで開始した(6)透析医療施設への質問紙調査について、集計と解析を行う。計画変更により研究項目(7)については内容を再考する。 4)その他のサーベイランス:予定していた研究項目の進捗が順調であるため、他の種類のサーベイランスについても感染防止ケアの探索につながる研究の可能性を検討する。研究項目を新たに追加する場合には、専門に応じた研究協力者等を研究組織に適宜追加し、改訂された倫理指針を遵守し、倫理審査の承認を得てから研究を開始する。 すべての研究項目について、引き続き最新情報の更新を国内外の文献レビュー、病院視察、学会参加により行う。研究成果を関連学術誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
MDRPサーベイランスを活用した研究項目(4)において、予備解析の後に全ゲノム解析をする計画であったが、すべての株の全ゲノム解析を行うように計画を変更したため、予備解析が不要になった。連携研究者および研究協力者がすべての実験を実施でき、交付申請時に計上していた実験補助者の人件費が削減できた。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の副次的な研究成果である薬剤耐性緑膿菌ST357株について追加実験が必要な場合の費用に使用する。また、全体の進捗が予定を上回っているため、研究期間内に他の種類のサーベイランスを活用した研究項目の追加が検討できるため、その費用に使用する。
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