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2015 年度 実績報告書

医療関連感染サーベイランスの活用による感染防止ケアの探索

研究課題

研究課題/領域番号 26293458
研究機関国立研究開発法人国立国際医療研究センター

研究代表者

西岡 みどり  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 国立看護大学校, 教授 (60462785)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード医療関連感染 / サーベイランス / 感染管理 / 感染防止技術 / 末梢静脈カテーテル / 薬剤耐性緑膿菌 / 透析 / 重症心身障害児(者)
研究実績の概要

本研究の目的は1)末梢静脈カテーテル関連感染、2)多剤耐性緑膿菌multidrug resistant Pseudomonas aeruginosa (MDRP)、3)透析関連感染の各サーベイランスを活用して、有効な感染防止ケアを明らかにすることである。サーベイランスとは臨床データを収集して感染率を計算し、臨床へ継続的に感染率をフィードバックする活動である。
平成27年度は、末梢静脈カテーテル関連サーベイランスを活用した経済評価に関する研究成果を国内学術誌に論文発表した。
末梢静脈輸液療法(点滴)はカテーテル挿入から抜去までを看護師が行う。ケアや観察を怠ると静脈炎や血流感染といった重篤な合併症を起こすため、国内外のガイドラインでは3日毎にカテーテルを刺し換える「定期交換」法を推奨している。本研究では、感染症看護専門看護師と感染管理認定看護師が末梢静脈カテーテル関連サーベイランスを実施し綿密に観察・管理する1施設で調査を行った。「定期交換」法から「静脈炎などの兆候出現まで刺し換えない方法(イベント交換)」へ変更してもイベント(血流感染、静脈炎、血管外漏出、閉塞)発生率に有意な上昇がないことを示した。また、時間計測による人件費、購入価格調査による材料費、重量計測による廃棄費を算入した費用最小化分析の結果、「定期交換」から「イベント交換」へ変更することで、点滴1回あたり268円削減することを明らかにした。「イベント交換」は、コクランレビューで安全性が示唆されているものの、静脈炎兆候発見の遅れによる重篤な合併症の危険も危惧されている。本研究成果は、感染症看護専門看護師や感染管理認定看護師がサーベイランスを行いながら管理する体制下での「イベント交換」の安全性と経済性を示したものである。本研究成果は、点滴患者の苦痛軽減と医療費削減に貢献するものと考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の研究計画で予定していた7つの研究項目のうち、透析サーベイランス研究については、他の研究者の最新の研究動向により計画を修正し、2つ研究項目を1つに統合した。平成27年度までに、これら6つの研究項目すべてを実施した。
平成26年度の進捗が予定を上回っていたため、平成27年度には、その他のサーベイランスを活用した研究の可能性を検討し、新たに「重症心身障害児施設における呼吸器感染サーベイランスに関する研究」を倫理委員会の承認を経て開始した。
したがって、当初の計画以上に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

最終年度である平成28年度の研究は以下のように進め、成果を関連学会で発表したり、国内外の学術学会誌に論文投稿したりする予定である。また、研究期間内に他の種類のサーベイランスを活用した研究項目の追加が可能であれば検討し、倫理委員会の承認を経て実施する。
1)末梢静脈カテーテル関連サーベイランスを活用した研究:「イベント交換」管理下で末梢静脈輸液療法(点滴)を行う場合のイベント発生リスク因子を、生存時間解析をして明らかにした成果を取りまとめる。また、「イベント交換」下で点滴をする際には、サーベイランスを実施するなどして綿密にイベント兆候を観察することが求められるが、中小病院でも実践できる簡便なサーベイランス手順書を作成して公開することを検討する。
2)MDRPサーベイランスを活用した研究:薬剤耐性緑膿菌の全ゲノム解析と診療録調査により特定したST235株伝播リスク因子を傾向スコアを用いて明らかにした成果を取りまとめる。また、ST357株についても同様の研究を検討する。明らかにしたリスク因子をもとにMDRP伝播防止策を提案する。
3)透析サーベイランスを活用した研究:透析医療を行う全国の病院と診療所を無作為抽出して対象とした質問紙調査による成果を取りまとめる。また、診療所でも実践できる簡便な透析サーベイランス手順書を作成して公開することを検討する。
4)その他のサーベイランスを活用した研究:重症心身障害児(者)施設の看護管理者および療育責任者を対象とした質問紙調査による成果を取りまとめる。さらに、1施設の診療録調査(倫理委員会承認)を行い、重症心身障害児の呼吸器感染症リスク因子の探索研究を実施し成果を取りまとめる。

次年度使用額が生じた理由

MDRPサーベイランス研究では、予備解析後に菌株の全ゲノム解析をする計画であったが、すべての株の全ゲノム解析を行ったため、予備解析費を削減できた。連携研究者および研究協力者がすべての実験を行ったため、計上していた実験補助者人件費を削減できた。
研究代表者、連携研究者および研究協力者がすべてのデータ入力作業を休日等に実施したため、計上していた研究補助者人件費を削減できた。
以上の理由により、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

最終年度である平成28年度の使用計画は、1.MDRPサーベイランス研究の副次的成果である薬剤耐性緑膿菌ST357株について追加実験が必要な場合の費用、2. 全国調査2件(透析・重症心身障害児)の協力施設への報告書印刷・発送費、3.学会発表・論文投稿費である。
また、効率的な研究活動の努力を継続し、研究期間内に他の種類のサーベイランスを活用した研究項目の追加が可能であれば検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] 末梢静脈カテーテル管理におけるイベント交換の費用最小化分析2016

    • 著者名/発表者名
      武田由美,網中眞由美,坂木晴世,福田哲也,駒形奈央,藤田烈,森那美子,西岡みどり
    • 雑誌名

      日本環境感染学会誌

      巻: 31 ページ: 17-23

    • DOI

      http://doi.org/10.4058/jsei.31.17

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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