研究課題/領域番号 |
26293458
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
西岡 みどり 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 国立看護大学校, 教授 (60462785)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療関連感染 / サーベイランス / 感染管理 / 感染防止技術 / 末梢静脈カテーテル / 薬剤耐性緑膿菌 / 透析 / 重症心身障害児(者) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は1)末梢静脈カテーテル関連感染、2)多剤耐性緑膿菌(MDRP)、3)透析、4)重症心身障害児(重症児)の各サーベイランスを活用して、有効な感染防止ケアを明らかにすることである。サーベイランスとは臨床データを収集して感染率を計算し、臨床へ継続的に感染率をフィードバックする活動である。 平成28年度は、3)透析サーベイランスに関する研究と4)重症児サーベイランスに関する研究をとりまとめ、それぞれ研究成果の一部を関連学術学会で発表した。また、伴侶動物由来微生物による呼吸器感染に関する網羅的な文献レビューを行い、イヌやネコ由来のPasteurella multocidaによる肺炎の生活上のリスクを明らかにし、本学紀要に総説として投稿し発表した。また、その他のサーベイランスを活用した研究の可能性を検討し、新たに「先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の手術部位感染(SSI)サーベイランスに関する研究」と「造血幹細胞移植患者の細菌感染症サーベイランスに関する研究」を立案し、倫理審査委員会へ提出した。 透析サーベイランスを活用した研究では、全国の透析施設を対象に質問紙調査を行い、血液透析の約半数を実施している診療所における感染対策の実態を初めて明らかにし、成果を学術学会で発表した。さらに、多くの交絡要因を制御して透析サーベイランス実施の関連要因を明らかにした。 重症児サーベイランスを活用した研究では、2つの質問紙調査を行い重症児施設の「看護」と「療育」における感染対策の実態を明らかにし、成果を学術学会で発表した。さらに診療録調査を行い、多くの交絡要因を制御して重症児の呼吸器感染症リスク要因に「療育」の1つである「ムーブメント」が関与していることを明らかにした。 平成28年度の本研究成果は、透析患者の感染防止、および重症児の呼吸器感染防止に貢献するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の進捗が予定を上回っていたため、平成28年度には、その他のサーベイランスを活用した研究の可能性を検討し、新たに「先天性横隔膜ヘルニア(CDH)手術の手術部位感染(SSI)サーベイランスに関する研究」と「造血幹細胞移植患者の細菌感染症サーベイランスに関する研究」の2つの研究を立案し、倫理審査委員会へ提出した。 したがって、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成29年度の研究は以下のように進め、成果を関連学会や国内外の学術学会誌で発表する予定である。 1)末梢静脈カテーテル関連サーベイランスを活用した研究:「イベント交換」管理下でのリスク因子を生存時間解析で明らかにした成果を海外の学術雑誌に論文投稿する。平成27年度に論文発表した「イベント交換」の費用最小化分析による研究成果は、「イベント交換」を推進する根拠となるが、その場合はサーベイランスを実施するなどして綿密にイベント兆候を観察することが求められる。そこで、簡便なサーベイランス手順書を作成してHP上に公開することを検討する。 2)MDRPサーベイランスを活用した研究:薬剤耐性緑膿菌の全ゲノム解析と診療録調査により特定したST235株伝播リスク因子とMDRP伝播防止策を海外の学術雑誌に論文投稿する。また、目的をより精緻に達成するため副次成果(ST357株クラスター)に関する追加実験を行う。 3)透析サーベイランスを活用した研究:透析を行う病院と診療所を対象とした全国調査の成果を国内の学術学会誌に論文投稿する。 4)重症心身障害児(重症児)サーベイランスを活用した研究:重症児施設の看護管理者と療育責任者を対象とした全国調査の成果を国内の学術学会誌に論文投稿する。さらに、重身児の呼吸器感染症リスク因子の探索研究の成果を海外の学術学会誌に論文投稿する。また、重身児施設における呼吸器感染サーベイランス手順書を作成してHP上に公開することを検討する。 5)その他のサーベイランスを活用した研究:平成28年度に倫理審査委員会に提出した「先天性横隔膜ヘルニア(CDH)手術の手術部位感染(SSI)サーベイランスを活用した研究」と「造血幹細胞移植患者の細菌感染症サーベイランスを活用した研究」の2つの研究を開始する。平成29年度内に取りまとめ、学会発表と論文投稿をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
MDRPサーベイランス研究では、予備解析を止めすべての株の全ゲノム解析を行ったため、予備解析費を削減できた。連携研究者および研究協力者がすべての実験を行ったため、計上していた実験補助者人件費を削減できた。研究代表者、連携研究者および研究協力者がすべてのデータ入力作業を休日等に実施したため、計上していた研究補助者人件費を削減できた。また、透析サーベイランス研究の研究協力者の急病により、平成28年度に予定していた協力施設への報告書印刷・発送を平成29年度に行うことになった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成29年度の使用計画は、1. MDRPサーベイランス研究の副次的成果である薬剤耐性緑膿菌ST357株の追加実験費用、2. 透析サーベイランス研究の協力施設への報告書印刷・発送費、3. SSIサーベイランス研究の調査費用、報告書印刷・発送費、4. 各研究成果の学会発表・論文翻訳費・論文投稿費である。 また、効率的な研究活動の努力を継続し、研究期間内に他の種類のサーベイランスを活用した研究項目の追加が可能であれば検討する。
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