本研究の目的は、1)末梢静脈カテーテル関連感染、2)多剤耐性緑膿菌(MDRP)、3)透析、4)重症心身障害児(重症児)の呼吸器感染、5)先天性横隔膜ヘルニア(CDH)児の手術部位感染(SSI)、6)造血幹細胞移植後早期の細菌感染、7)手指衛生の各サーベイランスを活用して、感染リスク因子や有効な感染防止ケアを明らかにすることである。なお、サーベイランスとは、臨床データを収集して感染率を計算し、臨床へ継続的に感染率をフィードバックする活動である。 平成29年度は、5)~7)のサーベイランスを活用した研究項目を実施した。7)の手指衛生サーベイランスを活用した研究項目では、「手指衛生風土」を測定する尺度開発を行い、学術学会で発表した。また、新生児のSSIリスク因子、および造血幹細胞移植患者の口腔ケアに関する網羅的な文献検討を行い、成果を本学紀要に総説として投稿し発表した。さらに4)のサーベイランスを活用した研究項目の成果として「重症心身障害児(者)施設向け呼吸器症候群サーベイランス手順書(案)」を作成し、所属施設ホームページ上に公開した。 5)のCDH児のSSIサーベイランスを活用した研究項目では、NICUおよび手術室の看護師を対象に2つの質問紙調査を行い、CDH児の周手術期ケアについての実態を明らかにした。その成果を関連学術学会で発表した。また、1施設の診療録調査を行い、多くの交絡要因を制御して、CDH児のSSIリスク要因を特定した。 6)の造血幹細胞移植後早期の細菌感染症サーベイランスを活用した研究項目では、1施設の診療録調査を行い、多くの交絡要因を制御して、造血幹細胞移植後早期の血流感染、および肺炎のリスク要因を特定した。 平成29年度の本研究成果は、先天性横隔膜ヘルニア児の手術部位感染防止、造血幹細胞移植後早期の細菌感染症防止、および手指衛生推進に貢献するものと考える。
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