研究課題/領域番号 |
26293460
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 冨美子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40297388)
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研究分担者 |
石田 孝宣 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00292318)
佐藤 菜保子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40457750)
有永 洋子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90620667)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳がん / がん看護学 / 術後上肢機能障害 / 症状マネジメント / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
「乳がん体験者の術後上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラム」の効果を術後5年までの上肢機能の経時的変化で検証した。初発乳がんで腋窩リンパ節郭清術を受け、2010年1月から2017年1月に術後5年までの調査に参加した介入群35名、対照群23名を対象とした。介入群にはUCSF症状マネジメントモデル(1994)を枠組みに作成したプログラムに基づいた教育介入を術前、術後1週、1か月、3か月、6か月以降6か月毎の5年まで原則14回実施した。上肢機能は上腕・前腕の両側周径、肩関節可動域、握力を測定した。また腫脹・肩関節可動域制限・痛み・知覚鈍麻・筋力低下・皮膚のひきつれ感に関する15項目「あり(1点)」「なし(0点)」の2段階評定である乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度(SPOFIA)および腕の能力に関する30項目「全く困難なし(1点)」から「できなかった(5点)」の5段階評定で100点満点に換算した上肢障害評価表(DASH)を用いた。各群の経時的比較は一元配置分散分析、術後1週と5年の比較は対応のあるt検定を用いた。介入群で病期の進行がある者が有意に多かった(p<.05)が、術前の上肢機能に有意差はなかった。介入群の上腕周径患側健側差は術後5年で減少したが、対照群は術後1週と比較し有意に増加した。肩関節可動域屈曲・外転は術後5年で介入群(F=28.9;p<.001)、対照群(F=13.9;p<.001)が、水平伸展は介入群が有意に改善した(t=-2.09:p<.05)。SPOFIAスコアは介入群が術後5年で有意に減少したが、対照群は有意差がなかった。DASHは術後1週と5年の比較で2群とも有意に減少した。術後5年までの乳がん体験者の上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラムは上腕の腫脹、肩関節可動域、腕の主観的症状を改善する教育効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度内には「乳がん体験者の術後上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラム」の効果を検証し、研究課題Ⅱ「乳がん体験者の長期リハビリケアプログラムの構築に関する研究」を開始する予定であった。しかし、術後5年までの調査が2017年1月26日まで要し、さらに研究責任者の健康上の理由で、2月~3月の期間、研究が中断されたために研究課題Ⅱの調査開始を平成29年度に修正しなければならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題Ⅱの乳がん体験者の長期リハビリケアプログラムの構築に関する研究を開始する。平成29年度は「乳がん体験者の長期リハビリケアプログラム」を作成し、その内容妥当性を検証する。プログラムの内容は、本研究課題1の術後5年までの調査で蓄積したデータの解析結果および先行ガイドラインを参考に原案を作成し、乳がん看護、医療を実践する専門家グループで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度以内に開始予定であった調査が遅れていること、術後5年までの調査を終了したばかりで論文作成に至らなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度以降は研究課題1に関する調査結果の英語論文の投稿および校正に計上する。また、乳がん体験者の長期リハビリケアプログラムの構築に向けて、研究活動を充実させる。
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