研究課題/領域番号 |
26293465
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
飯岡 由紀子 埼玉県立大学, 大学院保健医療福祉学研究科, 教授 (40275318)
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研究分担者 |
小林 礼実 東京女子医科大学, 看護学部, 助教 (00623076)
峯川 美弥子 東京女子医科大学, 看護学部, 助教 (90366500)
鈴木 香緒理 東京女子医科大学, 看護学部, 助教 (50713012)
河合 育世 東京女子医科大学, 看護学部, 助教 (60609288)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 看護学 / がん看護学 / 看護外来 / アウトカム |
研究実績の概要 |
1.がん看護外来の看護実践に関する全国実態調査:がん診療拠点病院のがん看護外来を担当している看護師への調査データを基に、看護実践の40項目の因子分析を行った。6因子が抽出され、「気持ちの整理」「他部署との連携」「治療上の支援」「在宅療養の支援」「予測による働きかけ」「支援のための準備」と命名した。がん看護外来の看護師は、患者・家族の気持ちの整理をして、副作用対策や疼痛コントロールなどの治療上の支援や在宅療養の支援を担っていることが明らかになった。また、看護実践の中心的な役割は相談であり、相談に柔軟に対応するための能力が求められていることが考察された。更に、がん看護外来の今後の課題の16項目も因子分析を行った。4因子が抽出され、「自分の能力向上」「人材育成」「専門性の発揮」「活動の拡充」と命名した。がん看護外来の看護師は、今後の課題として自分自身の能力向上を強く意識していた。がん看護外来の看護師は、短時間で課題を見極め、即座に支援を提供しなければならないことから、高いコミュニケーション能力や専門的知識・技術が求められるという認識が強いため、自身の能力向上を意識しやすいと考察された。 2.がん看護外来のアウトカム評価指標の開発:これまでの研究成果を基に、アウトカム評価指標を開発した。がん看護外来の成果としては、利用者である患者・家族による評価と、ケア提供者である外来担当看護師による評価の2つの方法で行うこととした。患者・家族による評価は、12項目から成り、満足したか、今後の見通しが見えたか、意向に沿った対応をしてくれたかなどを尋ねることとした。看護師による評価は、19項目から成り、行った看護実践の適切性を問うこととした。看護外来の主な実践は相談であり、実践は個別性が非常に大きいため、この2つの評価指標は、1事例毎に評価できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度計画していたアウトカム指標の開発はできた。しかし、開発したアウトカム評価指標を活用して、その有用性・実現可能性・容認性を検討する研究が終了していない。 アウトカム指標の開発に予定よりも時間を要したためであり、その主な理由はがん看護外来における看護実践が非常に多様であり、統一した評価を行うことの難しさがあった。つまり、看護師は、患者・家族から個別性に富んだ相談をうけ、相談内容に応じたアドバイスや対処を行っていた。このような実情を反映して評価指標を開発する場合、どうしても抽象度が高くなるが、看護実践を評価する機能を持つためには具体性が重要である。この相反する状況をふまえ、アウトカム評価指標は事例毎に個別で活用するようにした。更に、多忙な外来で効率性を重視したものとなることも考慮して、その運用について吟味を重ねた。以上のように、入念な検討によりアウトカム使用を開発したため、予定よりも時間を要することとなった。次年度はその有用性・実現可能性・容認性を検討する研究を行い、指標の普及に努める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.アウトカム評価指標の有用性・実現可能性・容認性の検討:全国のがん診療拠点病院などに研究協力依頼書を送り、アウトカム評価指標の活用に関する研究に協力していただける施設を公募する。参加施設が決定したら、がん看護外来にてアウトカム評価指標を3か月間活用していただく。活用後には、使いやすさ、理解しやすさ、看護実践の反映状況などを尋ねる調査を行う。また、担当した看護師にインタビュー調査を行い、率直な意見を収集する。 2.アウトカム評価指標の普及:これまでの研究成果を論文としてまとめて公表する。更に、アウトカム評価指標は全国のがん看護外来で活用できるようにWeb版として運用する。学会の交流集会などを利用してその運用方法を含めて紹介したり、商業誌へ記事を掲載するなどして広報活動を積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.アウトカム評価指標の有用性・実現可能性・容認性の検討:アウトカム評価指標は開発できたが、それを活用するためのWeb版公開にあたり、サーバー費用などが必要となる。アウトカム評価指標の活用に協力する施設数にもよるが、試作的に行うとしてもその管理運用費用が必要である。更には、対象者への謝金も計上する必要がある。対象施設は全国の医療機関となる予定であり、研究打ち合わせのための交通費も必要である。データが収集されたら、データ入力業者への委託費用も計上する必要がある。 2.アウトカム評価指標の普及:論文化にあたり翻訳代を計上している。また、普及活動においては、ポスター作製費用、印刷代、広告代などが必要になると考えている。
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