研究課題/領域番号 |
26293466
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
野澤 美江子 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40279914)
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研究分担者 |
荒尾 晴惠 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50326302)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん看護学 / 意思決定支援 / 妊孕性 |
研究実績の概要 |
本研究は、がん生殖医療の視点で取り組む、がん患者の妊孕性温存に対する意思決定支援モデルを開発することを目的としている。平成28年度は、引き続き妊孕性温存に対するがん患者の意思決定および意思決定支援の様相を明らかにする、という目標に加え、妊孕性温存に対するがん患者の意思決定を支援するモデル案を構築する、という目標達成へ向け、下記を実施した。 1.がん患者の意思決定の様相【がん患者へのインタビュー調査】(1)方法:同意の得られたがん患者8人を対象に、半構成式インタビュー調査を実施し、内容分析を行った。(2)結果:【不妊治療と遺伝】(不妊治療への諦め・継続・難しさ、がんの遺伝性による影響)、【医療者】(対応が与える影響や対応の不満)、【情報入手とそれに基づく行動】(情報提供の時期、方法、情報提供の不足)、【サポート・相談】(相談の難しさ、サポート体制への要望、連携体制)、【気持ち】(難しさ、迷い)のカテゴリーが明らかになった。 2.がん患者の意思決定支援の様相【看護師への質問紙調査】(1)方法:無作為に抽出されたがん看護専門看護師、がん化学療法看護認定看護師、乳がん看護認定看護師、不妊症看護認定看護師の中で同意の得られた者を対象に、無記名の調査用紙を郵送法で配布・回収した。調査内容は①施設や職場の環境、②看護師の背景、③妊孕性温存の意思決定支援、④妊孕性ケアの困難、⑤専門家への相談と連携である。(2)結果:1,478部発送し603部回収(回収率51.1%)。妊孕性温存に関する情報提供のあり方、意思決定に向けた支援についての課題が明らかになった。さらに意思決定を促進する因子を明らかにする予定である。 3.がん患者の意思決定を支援するモデル案の構築:上記の結果および関連文献の検討を加え、エキスパートパネルによるグループインタビューに向けてフィールドの調整、協力者の依頼等の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、文献検討をふまえ、看護師への質問紙調査、意思決定支援モデル案の構築を着手する予定であった。しかし、計画よりも遅れている理由として、下記の2点が考えられる。1.がん患者へのインタビュー調査の結果をふまえ、看護師の実態調査の概念枠組を検討するところであった。しかし、がん患者へのインタビュー数の確保までに時間を要したため、その分析の着手が遅れ、調査用紙の概念枠組みの検討が遅れた。2.調査用紙を確実に配布し回収率を上げるため、調査者のピックアップをする際に認定看護師および専門看護師の新規承認・更新承認時期を待っており、時間が空いてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、引き続き、妊孕性温存に対するがん患者の意思決定を支援するモデル案を構築すること、そして構築した意思決定支援モデルを検証しその知見を発信することを目標とする。 平成28年度着手が遅れていたエキスパートパネルによる意思決定支援モデル案構築では、最初にがん患者の妊孕性温存に関わった経験を持つがん看護専門看護師、がん化学療法看護・乳がん看護・不妊症看護認定看護師によるフォーカスグループインタビューを夏に計画している。そのためには、早々に研究倫理委員会へ申請し、調査に着手すること、メンバーのリクルートをスムーズに行えるよう、本研究の研究分担者、連携協力者、研究協力者と連絡を密にとって進める。その後の分析なども計画的に進められるように、定期的な会議の開催も検討する。 また、調査結果をWorld Academy Nursing Society(WANS)、Asian Oncology Nursing Society(AONS)で学会発表し、意思決定支援のモデル案構築の発信への基盤を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に看護師への質問紙調査および意思決定支援モデル案の構築を計画していた。しかし、インタビューの実施や分析、それ以降の調査用紙の開発に時間を要し、質問紙調査実施に伴う支払いが年度末までに間に合わなかった、およびエキスパートパネルによる意思決定支援モデル案の作成までにたどり着かなかった。そのため、データ分析・テープ起こし等研究補助者への謝金、交通費、会議費等が使用できず、繰り越された予算がある。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、当初から平成26年度に引き続いて患者へのインタビュー調査及び看護師への質問紙調査の実施および意思決定支援モデル案の構築をする計画であった。しかし、平成27年度は看護師への質問紙調査に着手できなかったことから、平成28年度はその遅れを取り戻すべく、看護師への質問紙調査は7月に実施し8月に結果分析、エキスパートモデルによるグループインタビューは8月~9月に実施し、年内にモデル案の構築、年度内にパイロットテストに着手できるように計画的に遂行する。それに伴う質問紙調査印刷代、切手、インタビュアーの交通費、研究協力者への謝礼品、研究補助者への謝金、テープ起こし代、会議費等で使用予定である。
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