研究課題/領域番号 |
26300002
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
徳山 孝子 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (10271470)
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研究分担者 |
打田 素之 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (20368492)
木谷 吉克 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (40186250)
笹崎 綾野 佐野短期大学, その他の部局等, 准教授 (60724010)
中村 茂 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (80128834)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 洋装化 / 技法書 / 明治天皇 / 礼服・軍服 / ナポレオン3世 / 徳川慶喜 / 紳士服 (TAILLEUR) / フランス・パリ |
研究実績の概要 |
我が国の洋装文化形成の最初期において、礼服・軍服などの男子服意匠の導入に大きな影響を与えた幕末から明治維新期にかけての日仏間の交流の経緯と実態を明らかにすることを目的とした。 ナポレオン3世から徳川慶喜へ贈呈されたとされる軍装品(軍服、軍帽等)は、写真の現存する徳川慶喜が着用した軍服については当時の将軍の礼服、通常服であり、パリの軍事博物館に展示される軍服とほぼ同じ意匠であった。また現存する軍帽(久能山東照宮博物館所蔵)の意匠から、将軍が通常時に着用する”Kepi”であることが確認できた。 日本の男子服技法書は、1873年から1888年までに発行された男子服の技法書14冊を取り上げた。その中の一冊である原田新次郎訳『西洋裁縫教授書』は出版元を変えて二回出版されており、それはThe Tailor’s guideの訳本とされていた。The Tailor’s guideにGuillaume Compaing、Charles Compaing、Louis Devereらが関わっていることがわかった。フランス、イギリス、アメリカをはじめとする欧米各国では、紳士服製作の専門的な技法を示した雑誌や技法書がテーラーやプロフェッサーにより刊行され、システム化されたテーラー技法が発展していたことが読み取れた。 日本政府(当時の宮内省)がフランスAICP校に発注したと思われる明治天皇の絵型や注文書について検証した。AICP校の初代校長は、テーラー職人「フランソワ・ラドヴェーズ」であった。ラドヴェーズは、自らテーラーの割出法を開発し既製服に着手した。ラドヴェーズの人物像が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本政府(当時の宮内省)がフランスAICP校に発注したと思われる注文書について検証した。国民の新時代を印象づけた明治天皇の御正服(軍服)を取り上げ、その歴史的経緯と意匠を調査収集とその分析により明らかにした。特にAICP校の初代校長フランソワ・ラドヴェーズの残した雑誌からラドベーズのテイラー職人としての経歴や生い立ちがわかった。 ナポレオン3世から徳川慶喜へ贈呈されたとされる軍服、軍帽、鎧兜等の軍装品の意匠、技術、制作者などに関してフランスにおける調査から判明した。 当時の男子服意匠の導入における技術的側面を担っていたと考えられる紳士服技法書について、フランスと日本で刊行されたそれらの特徴と技法の差異を示し、日本における製図の解釈と独自性を明らかにした。 今年度の研究成果は、研究発表3件であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の補完的調査を続行する。さらに、29年度は次の内容を研究調査する。最終年度のため、研究成果を論文にまとめ、さらに一般公開という形で報告会を開催する。 ①幕府が御用商人として選んだ洋裁店「エス・ブーシェ」がフランス・パリでどのような洋裁店として位置づけられていたのか、歴史的背景から洋裁店「エス・ブーシェ」と日本人との交流について明らかにする。 ②洋裁店エス.ブーシェの看板に葵の御紋があった、という記録から住所を手掛かりに、当時の写真を収集する。 ③1866年フランス軍事顧問団が14代将軍徳川家茂の要請でナポレオン3世が派遣した一行の記録を調査する。主に幕府崩壊後、帰国せずフランス公使館の通訳アルペール・シャルル・デュ・ブスケの資料を収集する。 ④フランソワ・ラドベーズのファッションプレートを確認し分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年11月13日、フランス国パリで同時多発テロが発生するなど現地の治安が悪化し、現地調査が困難になった。そのため、研究期間を延期した。 使用計画 平成29年1月の第2回パリ現地調査を平成29年2月に実施する。延期した平成28年8月以降の第1回パリ現地調査から平成28年研究成果発表シンポジウムは、平成29年8月以降に実施する。研究最終年度のため平成29年3月の研究成果まとめは、平成29年12月に変更する。
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