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2016 年度 実績報告書

古代農耕社会の魚:東アジアにおける養魚の成立

研究課題

研究課題/領域番号 26300004
研究機関岡山理科大学

研究代表者

中島 経夫  岡山理科大学, 地球環境科学部, 教授 (60139938)

研究分担者 内山 純蔵  ふじのくに地球環境史ミュージアム, その他部局等, 教授 (40303200)
槙林 啓介  愛媛大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50403621)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード養魚 / 魚類遺存体 / 淡水漁撈 / 漁具 / 古代農耕社会
研究実績の概要

河南省賈湖遺跡の咽頭歯遺存体の概要は中島他(2015a)で報告。賈湖遺跡の3つの文化期の中で、第3文化期にコイについて養鯉が始まっていたことを明らかにした。この結果の公表については、投稿雑誌のレフリーとのやりとりが継続中で公表にいたっていない。広西チワン族自治区から出土した絶滅種のコイについての報告は、中国側の都合でまだ報告書が出版されていない。
養殖の根拠の1つとして魚の採捕季節を推定する必要がある。そこで、現生のコイについて、脊椎骨、咽頭骨の冬輪を観察し、その本数、間隔から年齢および採捕季節を推定する方法を確立した。その結果を遺存体に利用できないかを検討している。
漁具についての研究は、中国殷周時代以降の漁撈具資料をひきつづき収集するとともに、近年刊行された発掘調査報告書から、新出の資料を収集した。また浙江省、南京市、江蘇省で出土資料の調査を行った。さらに大陸と日本列島との関連を探るべく、日本の関係資料の収集と出土資料調査を行っている。
東アジアの農耕社会における淡水漁撈および養魚の起源にかかわる歴史的・文化的背景を解明するため、日本列島の縄文時代草創期からの魚類遺存体の調査を継続するとともに、新石器時代のヨーロッパ内陸部での淡水漁撈の調査も実施した。28年度は、欧州アルプス地域(チロル地方およびスロベニア)で調査を実施し、漁撈文化について基礎的資料を収集した。結果として、ドナウ水系はコイ科・マス類が豊富であり、当該地域社会にとって、漁撈は新石器時代以来、重要な生業であること、中世から近世には修道院等でコイの畜養池が広くみられ、冬至祭などで食されたことなどが判明した。淡水漁撈や養殖は、東アジアに限らず、内陸部では需要な生業であることが明らかになった。しかし、農耕と淡水漁撈との結びつきがあるのは、稲作を発達させた東アジアの特徴であることが明らかにされた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで、中国新石器時代の遺跡から出土するコイ科魚類遺存体の研究成果は順次公表してきた。また、農耕社会における養魚の起源にかかわる淡水資源利用の歴史的、文化的背景の解明を目的に、日本列島の縄文・弥生時代遺跡から出土するコイ科魚類遺存体の調査を実施し、西日本と東日本との違いを示してきた。また、比較のためにヨーロッパ内陸部の淡水漁撈や養魚についての資料収集、調査を実施した。漁撈は新石器時代以来、重要な生業であること、中世から近世には修道院等でコイの畜養池が広くみられ、冬至祭などで食されたことなどが判明した。淡水漁撈や養殖は、東アジアに限らず、内陸部では需要な生業であることが明らかになった。しかし、農耕とのかかわりは、稲作地域である長江流域、早くに稲作を受容した西日本では密接で、稲作の受容が遅れた東日本や稲作がなかったヨーロッパでは結びつきが希薄であることが明らかになった。中国の殷周時代のコイ科魚類遺存体の調査ができなかったので、おおむね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

中国新石器時代遺跡から出土するコイ科魚類遺存体についての研究成果を順次公表していく。中国の国家成立期の遺跡からの遺存体の調査は来年も追及するが、断念しなければならないかもしれない。そのため、稲作を受容した縄文社会における淡水漁撈の実態、生業における重要度を、日本海、太平洋沿岸、日本列島の東と西を比較しながら明らかにする。そため各地の縄文時代草創期から弥生時代の遺跡から出土するコイ科魚類遺存体の調査を昨年度に引きつき調査する。また、稲作に淡水漁撈がどのようにかかわったのかを比較するためにヨーロッパ内陸部の淡水漁撈についてもさらに調査を実施したい。
また、遺存体の採捕季節、年齢を明らかにするために、遺存体の脊椎骨、咽頭骨の成長線の分析を継続して実施する。
さらにこれまでの研究成果をすみやかに公表したい。

次年度使用額が生じた理由

殷周時代の遺跡から出土する魚類遺存体について、中国社会科学院考古研究所側の整理が終わっていないため、中国での調査が実施できなかった。そのため、28年度も次年度使用額が生じている。

次年度使用額の使用計画

29年度は未使用額は、国内の遺跡調査を実施するための旅費に使用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] 中国社会科学院考古学研究所/中国科学院水生生物研究所/中国科学技術大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国社会科学院考古学研究所/中国科学院水生生物研究所/中国科学技術大学
    • 他の機関数
      3
  • [雑誌論文] 人類世の起源を考える―歴史的長期の視点から―2017

    • 著者名/発表者名
      内山純蔵
    • 雑誌名

      環境考古学と富士山

      巻: 1 ページ: 5-12

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 稲作出現地とその周辺部への伝播の様相-長江流域を例として2017

    • 著者名/発表者名
      槙林啓介
    • 雑誌名

      平成28年度瀬戸内海考古学研究会大会予稿集

      巻: 1 ページ: 1-10

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 考古学からみた富山湾の自然と生業:環境史の視点2016

    • 著者名/発表者名
      内山純蔵
    • 雑誌名

      Biostory

      巻: 26 ページ: 43-50

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 稲作出現地とその周辺部への伝播の様相-長江流域を例として2017

    • 著者名/発表者名
      槙林啓介
    • 学会等名
      平成28年度瀬戸内海考古学研究会大会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      2017-06-18
  • [学会発表] Idealized landscapes and heritage: sustainability in mountain Japan2016

    • 著者名/発表者名
      Junzo Uchiyama
    • 学会等名
      Movement and Landscape
    • 発表場所
      Ljubliana University, Ljubliana, Slovenia
    • 年月日
      2016-09-15
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Fuji as a European Mountain? Universal heritage value, local identities and changing at a new world heritage site2016

    • 著者名/発表者名
      Kati Lindstroem and Junzo Uchiyama
    • 学会等名
      Permanent European Conference for the Study of the Rulal Landscapes
    • 発表場所
      Institute for Interdisciplinary Mountain Research, Innsbruck, Austria
    • 年月日
      2016-09-05 – 2016-09-11
    • 国際学会
  • [図書] Neolithization: a perspective from the East Asian Inland Seas. In: Yasuda, Y. and Hudson, M. eds. Multidisciplinary Studis on the Environment and Civilization: Japanese Perspectives.2017

    • 著者名/発表者名
      Junzo Uchiyama
    • 総ページ数
      20
    • 出版者
      Routledge
  • [図書] Why did northern foragers make pottery? Investivating the role of Incipient Jomon ceramicswithin wider subsistence strategies, based on a zooarhcaeological analysis of teh Torihama site. In: Jordan P. and Gibbs K. eds. Circumpolar Ceramics: A New Research Paradigm for Hunter-Gatherer Technology.2017

    • 著者名/発表者名
      Junzo Uchiyama
    • 総ページ数
      10
    • 出版者
      Cambridge University Press

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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