研究課題
農山村に長年暮らしてきた人々が有する在来知に関する研究は、これまで認識人類学や自然資源の管理・保全の観点からおこなわれてきた。これに対して、今後の在来知研究の重要性は、近年急速に進展している経済のグローバル化に伴う、地域の食糧安全保障のリスクへの対処という観点から高まると考えている。グローバルなシステムが崩れた場合、地域レベルの自給農業を支えるのが在来知だからである。一方、その在来知は、近年、世界的に多くの地域で急速に変容・衰退してきている。とくに東南アジアは、近年まで豊かな在来知により暮らしが支えられてきたが、急速な経済発展に伴い、自給農業に関する在来知の変容・衰退が著しい。そこで本研究では、東南アジアを主調査地とし、自給農業に関連した、変容・衰退しつつある在来知について、地域の食糧安全保障の観点から評価し、その将来像を検討・提言することを目的として研究をおこなった。26年度においては、マレーシア、タイ、インドネシアの各調査地において、合同調査を実施し、調査村落および調査項目の詳細の決定および予備的な調査を実施した。その結果、北タイや東マレーシアばかりでなく、人口稠密な中部ジャワにおいても、若者の都市への流出等により、空き家がみられていることや営農規模が縮小傾向にあることが明らかになった。農地評価はおもに北タイを中心に行うこととし、現地での調査を実施した。現地調査に加えて統計書等の文献調査もある程度進んでいる。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、タイ、インドネシア、マレーシアにおけるすべての調査候補地を訪れ、予備的な調査を実施できた。海外の研究者との協力関係も築け、27年度からの本格調査を実施する体制が整った。
27年度の研究方針は下記のとおりである。・年度初めの全体会議において、各調査地からの調査結果を共有し、比較検討をおこなう。最終年度の結果の総合化に向け、各調査地での調査項目や方法の調整をおこなう。・継続調査:各調査地において、平成26年度計画から引き続き、自給農業および生産物の分配・流通に関する在来知の現況および変容、および在来知による農業の持続性についての調査を実施し、おおむね完了させる。・日本での年度末における全体会議において、再度、調査結果を共有し、各調査地の在来知が持続的な自給農業に果たしうる役割について評価しつつ、結果の総合化に向け、調査の補完すべき点を明らかにする。この際、在来知の変容・消失が先進的に進んでいる日本の高知県の事例(飯國(連携)、市川担当)についても参照しつつ、議論を進める。
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