研究課題/領域番号 |
26300014
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 教授 (60340767)
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研究分担者 |
杉村 和彦 福井県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40211982)
坂井 真紀子 東京外国語大学, その他部局等, 准教授 (70624112)
池上 甲一 近畿大学, 農学部, 教授 (90176082)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アフリカ半乾燥地 / 農牧社会 / 食料安全保障 / 土地収奪 / 農業政策 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、前年度におけるタンザニア・ドドマ州周辺の予備的調査を踏まえて、より詳細な現地調査を行った。まず代表者ならびに分担者がこれまで研究拠点としてきたドドマ州Majeleko村において、農牧民ゴゴ人を対象に、食料の確保、貨幣経済の浸透、土地利用の変遷、階層分化などの観点から前年度より引き続いてフィールド調査を行った。とりわけ農牧民にとっての重要な資産である家畜(牛)を多数もつ富裕世帯と、牛をもたない貧困世帯とのあいだで食料をはじめとする資源へのアクセスがどのように異なるかを検討した。さらに、Majeleko村およびより都市にちかい村において、外部から導入されたマイクロファイナンスの受容の仕方について調査を行った。 次にタンザニア人富裕層や移民による土地収奪が深刻化しているドドマ州北部のイティソ地区において、土地利用の変遷や土地不足、森林破壊の現状などについて聞き取り調査を広範囲に実施した。その結果、これまで伝統的に農業用地とすることを避けてきた谷間の湿地帯が農地として開拓されつつあり、これまで湿地帯を牧草地として利用してきた牧畜民との間の抗争が激化していることが判明した。またドドマ州北西部Farkwa村近郊においては、現在計画されている都市の生活用水用のダム建設およびそれに伴う住民の移住について聞き取り調査をおこなった。 また前年度に引き続き首都ダルエスサラームにおいて土地収奪や人権問題に関わるNGOを訪問し、タンザニアにおける農業投資および土地紛争に関する聞き取り調査と資料収集を行った。 2016年2月21日には他の科研チームと合同で京都で土地収奪に関する国際シンポジウムを開催した。そこでは土地収奪の事情に詳しいAndreas Neef教授(オークランド大学)を招聘し、土地収奪を規制するための政策的枠組みの可能性について専門的知識の提供を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドドマ州でこれまで定着調査を行ってきたMajeleko村ならびにFarkwa村における食料安全保障(とりわけ貨幣経済の浸透と食料の入手方法の変化)、土地やそのほかの資源利用の変遷などに関するデータの収集が順調に進んでいる。 前年度はほとんど踏査できなかったドドマ州北部のイティソ地区において、数多くの村を訪問し、土地紛争や農地拡大、牧畜民と農民の対立などの実情について基礎的な資料を得ることができ、次年度調査への足がかりを作ることができた。 ドドマやダルエスサラームで農村開発や農牧民の権利保護といった分野で活動しているNGOを良好な関係を築くことができ、また国レベルでの農業開発計画に関する資料を入手した。 現地の研究パートナーであるドドマ大学のMwamfupe教授と今後の共同研究の進め方について確認するとともに、分担者の杉村とMwamfupe教授が中心になって編纂したタンザニアの農牧民社会変容に関する本が出版される運びとなった。
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今後の研究の推進方策 |
村レベルでの食料安全保障や土地など資源利用の変遷、貨幣経済の浸透といった点については、これまで研究対象としてきたMajeleko村などでの定着調査を継続する。 土地収奪については、そうした問題が集中的に生起しているドドマ州北部のイティソ地区において基礎的なデータの収集に努める。土地をめぐる紛争というデリケートな問題であるので、現地の研究パートナーであるドドマ大学の研究者や地方政府の協力を得ながら、慎重に調査をすすめていきたい。 平成28年度は最終年度であることから、タンザニアで現地研究者、NGO関係者を交えた研究集会を開催し、そこにアフリカの土地収奪問題に詳しいAndreas Neef教授(オークランド大学)を招聘する予定である。またカナダの国際学会や、国内の学会において、研究代表者・分担者が中心となって、タンザニア農牧民社会の変容やアフリカの農業近代化政策に関わるセッションを設け、議論を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の鶴田格が平成28年2月から3月にかけてタンザニアでの現地調査を予定していたが、健康上の理由により中止を余儀なくされたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年2月~3月に鶴田がタンザニアに渡航し、ドドマ州農村部で補足的な現地調査を行うために使用。
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