研究課題/領域番号 |
26300020
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
山下 則子 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (40311162)
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研究分担者 |
神作 研一 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (30267893)
小林 健二 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (70141992)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 在外絵入り本 / 国際情報交換イタリア / 国際情報交換アメリカ |
研究実績の概要 |
1,キオッソーネ東洋美術館所蔵絵入り本の調査と研究について 絵入り版本調査の最終確認を行って、日本語目録を作成する中で発見された、重点調査すべき絵入り本を抽出し、その版種を明らかにした。根拠となる先行研究を示しながら、版種推定を中心とした解説を付した。文学・出版・美術の各方面からの研究者を構成員とする共同研究会で、重点調査した絵入り本を研究対象とする研究会を、2014年9月9日(水)に開催した。共同研究会の内容は、以下の通りである。「山下則子― キオッソーネ東洋美術館蔵近世絵本解説」「ロバートキャンベル―「19世紀の欧米画本コレクターにおける幕末・明治」「武井協三― 資料紹介 鳥居清倍画「しぐれのゑん」 また、日本語目録の校正を恒常的に行っており、最終稿を英語化する作業も完成した。英語化した目録の校正も継続して行っている。中でも貴重な絵入り本の紹介・研究を、専門分野の研究者が多数集まる研究会で発表し、専門の立場からの意見をもらった。その成果の論文化を進めている。
2,ホノルル美術館リチャードレインコレクション所蔵版本の調査と研究 本年度の調査予定日程が、ホノルル美術館の大きな行事と重なり、収蔵庫の資料調査も、行事関係者が既に予約してあったため、調査不可能となった。急遽既に調査されている絵入り本の諸本校合を行うことに計画を変更し、ハーバード大学Yenching図書館、同美術館の調査とした。ハーバード美術館においては、日本で交流のあったアメリカ人日本文学研究者に、そこでの絵入り本の書誌的調査から判明した事項について教示し、所蔵機関関係者に伝えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キオッソーネ東洋美術館所蔵絵入り本の日本語目録はほぼ完成し、目録のいくつかの項目の英語化もほぼ終了した。ただし目録の校正には大変時間がかかり、正確な内容とするためには、複数の人数による校正が必要となる。現在はその校正途中にある。また、重点調査すべき絵入り本に関する諸本校合や研究は、その原型となる研究については共同研究会などで発表・討議しているが、その完成型である解説は未執筆である。一部のきわめて重要な作品については、専門研究者が多数参加する研究会で発表後、その成果発表を雑誌『演劇研究』に掲載予定である。 ホノルル美術館については、今年度は美術館側との日程調整がつかず、代わりに絵本の諸本校合のために、ハーバードYEnching図書館およびハーバード美術館に調査に行った。貴重な草双紙や絵本『新美人合自筆鏡』、『画本虫撰』、『潮干のつと』などの重要な絵本の調査を行った。中でも『絵本松のしらべ』に関しては、キオッソーネ東洋美術館蔵本や国文研蔵本との比較を行い、その成果を発表した。今後このような水準での成果発表を重ねたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究課題の推進方策については、 1,キオッソーネ東洋美術館所蔵絵入り本の日本語・英語目録を完成させる。数回の複数校正者の手を経て、極力完成度の高い内容にする。備考欄には、その作品に関する最新の学術成果を反映させるようにする。備考欄に書ききれない場合は、解説に特記する。この目録は現在の絵本研究の最新の水準を反映したものとし、それを世界に発信する予定である。 2,ホノルル美術館の絵入り本調査 ホノルル美術館リチャードレインコレクションは、その資料が未調査のものばかりなので、我々以外にも多くの調査団が入っている。ホノルル美術館収蔵庫への入場人数は限られているため、調査日程を組むのが難しくなっている。そのために26年度は他所蔵機関での諸本校合調査に振り替えざるを得なかったが、27年度はホノルル美術館での調査を実行し、科研メンバーの専門に応じた作品の調査を行いたい。科研メンバーの日程と美術館側との日程調整がつかない場合は、何人かに分けて調査を実行するという方策を取りたい。27年度は他所蔵機関への諸本調査に代行させる予定はないが、今後調査日程の調整が難しい場合は、再度諸本調査のための他機関への調査に振り返る可能性がある。ホノルル美術館での調査は、美術館による目録作成の助力なので、調査点数が膨大でなくても所定の目的は果たすことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本計画では、在外絵本資料調査を助成金の主たる使用目的としている。調査予定美術館の行事予定と調査日程がうまくかみ合わず、昨年度は少数参加者による他所蔵機関での諸本校合調査への振り替えとなった。また、在外絵本調査を書誌や出版の方面から更に研究を深めるためには、その資料となる古典籍資料を購入して、調査対象本との書誌や版元等の比較調査をする必要があるが、昨年度はそれに該当する最適な資料が市場に出なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、極力多くの参加人員での調査を実施するために、早期の日程検討を行い、美術館との十分な調整を行う予定である。また昨今の多忙な勤務状況により、調査員の予定がそろわない場合は、日程をずらしたり、何回かに分けて調査したり、という方策も検討している。また、在外絵入り本調査に重要な意味を持つ古典籍が市場に流通した場合は、可能な限りそれを購入したい。
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