研究課題/領域番号 |
26300024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴山 守 京都大学, 国際交流推進機構, 研究員 (10162645)
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研究分担者 |
杉山 洋 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 部長 (50150066)
田代 亜紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, アソシエイトフェロー (50443148)
伊東 利勝 愛知大学, 文学部, 教授 (60148228)
丸井 雅子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90365693)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東南アジア史 / 東南アジア考古学 / 地域情報学 / 考古遺跡分析 / ドヴァラワティ / クメール王朝 |
研究実績の概要 |
本研究は、東南アジア大陸部のミャンマーからタイ、カンボジアに至る古代・中世の「東西回廊」という視点から、特に6世紀から18世紀に至るミャンマー・タイ跨境の古代都市群とそれらの都市間の文化交流・交易ネットワークの歴史的動態について考究するのが目的である。本年度は、(1)沿岸都市ダウェイに位置する主なサガラー(Thagara)(ダウェイの北約18キロメートル)、モティ(Mokti)(ダウェイの南約8キロメートル)遺跡に対してミャンマー政府教育省およびヤンゴン大学考古学科との共同での遺跡・遺物調査を行つた(平成26年2月26日、本科研交付前調査)。(2)タイ側の古代都市シーテープ、ウートンなど旧アユタヤ湾周辺都市での調査においては、特にシーテープにおける調査とワークショップを行った(平成26年10月22日)。(3)アンコール期の最西端に位置するクメール遺跡ムアン・シン(カンチャナブリ県)とタイ東北部、及びアンコールワットから東側のベトナムに通じる回廊としてベトナムチャンパ遺跡群を調査し、新たたにチャンパ・アンコールのコミュニケーションルートが明らかになった(平成26年7月14日~17日)。(4)本来、平成27年度に実施予定のモン族周辺古代遺跡調査を平成26年度に前倒しして、ミャンマー側に位置するモン族古代都市遺跡調査を行なった。調査の中心は、タトーン(Thami-daw-gon Thaton)、モールメイン(Moulmein)などの、西のモン族の古代都市群であった(平成27年2月21日~24日)。(5)また、上智大学チームでは、ミャンマーのマンダレー、ダガウンにおいて博物館における考古資料収蔵情報の収集、瓦資料の調査、マンダレー管区内考古調査情報収集、およびピュー期から12・13世紀に至る遺跡調査を行った(平成27年3月4日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に実施した学術調査において(1)ダウェイ(Dawei) およびボンティ (Bon Ti) は、ドヴァーラヴァティー期以降のルートとして推定され、ダウェイからカンチャナブリに向かって東へのびる。各都市ともに、これまで発掘調査がほとんどおこなわれていないため、現地遺跡保存事務所と連携して試掘を試みるのが目的であったが、現地との連携が進まず、また予算の規模が大きいために引き続きプロジェクト内で検討することになった。今後、限定された予算の中で現地との調整が求められる。(2)タイ東北部及び中部・北部に通じるシーテープにおいては、今年度に新たな発掘調査が始まり、銀貨等の遺物が発掘された。その結果について、東西モン族の関係を示すものととして調査を継続しており、研究は概ね順調に進捗している。(3)ベトナム・チャム遺跡の調査については、クメール時代の交易・文化交流が明らかになりつつある。本調査では、当初の予想を上回る成果を挙げた。なお。これらの成果は、NHKスペシャル番組として、平成27年秋に報道される予定である。(4)平成27年2月のモン族の中心地タトーンの調査では、奈良文化財研究所の分担者により窯跡が発見され、そこに出土する陶磁腕が、スコータイ期と想定される宋胡録焼と類似しており、これまでのミャンマー・タイ間をつなぐ新たな関係を示唆するものとして注目している。研究計画では想定されていなかった予想を上回る成果である。(5)現地調査を実施する一方で、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどの国際共同研究としての、国際ワークショップ、シンポジウム、円卓会議を、バンコク(平成26年6月29日)、シーテープ(同9月22日)、ミャンマー円卓会議(平成26年7月24日)、バンコク(平成27年1月5日)の4回に渡って開催し、当初の計画を上回る成果を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、(1)当初の計画通りモン族周辺古代遺跡調査を対象にして、ミャンマー側に位置するモン族古代都市遺跡調査を行なう。具体的には、バゴー(ハンサワディー、ヤンゴンから北東約70キロメートル)から以東に展開する、チャイ・カター(Kyaikkatha)、ゾソック(Zothoke)、エイヤサマー(Ayeitthema)、サミードゥゴン・タトーン(Thami-daw-gon Thaton)、モールメイン(Moulmein)などの、西のモン族の古代都市群である地域での調査と陶磁窯跡の調査を中心に進める。また、その他、銀貨お及びビーズ等の遺物について、東西モン族の関係を対象にした調査を行なう。(2)分担者の伊東や現地連携研究者のムーアが「黄金の地」としての存在と周縁地域との文化的な関係性に言及していること、タトーン地域がミャンマー中部のピュー文化圏の中で成立していたこと、チャイ・カター城市の繁栄以降にハンサワディーに中心が移ったことなどを論じていることから、あらためて回廊という視点からの域内交流・交易を主眼に調査する。(3)石井がスコータイ碑文を根拠として「東西回廊」と定義したスコータイからミャンマーに通じるルートがある。しかし、本ルートにおいて考古学的遺物や遺構、交通手段などを対象にした臨地調査は、これまで実施されていない。また、ミャンマー・タイ跨境の陸路による踏査による調査の事例もなく、本研究で初めての踏査調査を計画する。(4)国際研究であるために、各国との研究進捗状況の調整が必要であるが、来る平成27年11月12日~14日にかけてチェンマイにて各プロジェクトの達成状況を交流する国際ワークショップを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に実施した学術調査において(1)ダウェイ(Dawei) およびボンティ (Bon Ti) の調査は、現地遺跡保存事務所と連携して試掘を試みるのが目的であったが、現地との連携が円滑に進捗せず、また膨大な予算が必要とされることから当初通りの調査を遂行できなかった。(2)平成27年2月のモン族の中心地タトーン地域の調査では、奈良文化財研究所の分担者により、現地ミャンマー考古学者との連携で、共同で発掘・調査するための経費を計画していたが、発掘調査が年度内に遂行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)平成27年2月のモン族の中心地タトーン地域の調査結果を踏まえて、現地ミャンマー考古学者との連携で、共同で発掘・調査するための体制が整った。そのために本経費をこれにあてる。 (2)現地調査を実施する一方で、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどの国際共同研究としての、国際ワークショップ、シンポジウムを、平成27年11月タイ国チェンマイで開催する経費に充てる。
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