研究課題
本研究の目的は、中米グアテマラ共和国のセイバル遺跡の都市周辺部に住んだ支配層と農民の住居跡とその周囲に広範な発掘区を設定して層位的発掘調査を実施し、多種多様な出土遺物の詳細な分析を通して、古典期(後250~1000年)に先立つ先古典期(前1000~後250年)のマヤ人の日常生活と社会経済組織の基礎的研究を推進することである。土器、石器、その他の全ての出土遺物を分析対象とする。青山が担当する石器の分析では、全石器の属性分析を行い、高倍率の金属顕微鏡を用いて石器の使用痕を分析した。支配層と被支配層が製作、流通、消費した様々な遺物の時間・空間分布を研究して、まだ十分に解明されていない先古典期マヤ人の日常生活と社会経済組織に関連する基礎的かつ実証的なデータを収集した。石器の属性分析や高倍率の金属顕微鏡を用いた石器の使用痕分析のデータベースを作成した。研究成果の一部をスペインのサラマンカ大学において開催されたアメリカニスト国際会議で発表すると共に、メキシコ国立自治大学で開催された国際シンポジウムにおいて招待講演を行った。セイバル遺跡では居住の定住性の度合い、価値観やアイデンティティなどが異なる多様な集団が、共同体の公共祭祀及び公共祭祀建築や公共広場を建設・増改築する共同作業によって社会的な結束やアイデンティティを固め、マヤ文明が発展した。公共広場で繰り返し慣習的に行われた埋納儀礼を含む公共祭祀という反復的な実践は、集団の記憶を生成し、中心的な役割を果たす権力者の権力が時代と共に強化された。初期支配層は地域間交換に参加して、黒曜石や翡翠のような重要な物資、観念体系や美術・建築様式などの知識を取捨選択しながら交換して権力を強化した。公共祭祀を形作り物質化したイデオロギーは、地域間交換や戦争など他の要因と相互に作用してマヤ文明の支配層の形成に重要な役割を果たした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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