研究課題/領域番号 |
26300026
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 誠一 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 教授 (10261249)
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研究分担者 |
寺崎 秀一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90287946)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 王権 / マヤ文明 / ティカル / エル・プエンテ / 国際情報交換(グアテマラ、ホンジュラス) |
研究実績の概要 |
本研究は、古典期マヤ文明の王権の発展過程を文明の中心地であるグアテマラ・ティカル遺跡と最も周縁の2次センターであるホンジュラス・エルプエンテ遺跡において追及するものである。
ティカル遺跡では、2015年度初頭から北のアクロポリス北東部において集中的な発掘調査を開始した。この地区は1956~69年のペンシルバニア大学博物館調査団の大規模発掘調査においても手を付けられなかった地区である。北のアクロポリスの建築群をその上に載せている最下部のプラットフォームに1ヶ所、二段目プラットフォームに1ヶ所発掘区域を設け深さ10メートルを超える集中発掘調査を行った。この結果、二段目のプラットフォーム下部の方が建築が古く、北のアクロポリスの初現期のものであることが判明した。この地区の発掘からは、4.5メートルを超える盛り土をもつ巨大なプラットフォームが王朝初期に一気に建設されたことを示す証拠が得られ、ペンシルバニア大学調査団が半世紀前の復元想像図で記載している巨大プラットフォームの存在を追認するとともに、当時の王権のありように一定の示唆を得ることができた。最下部のプラットフォームの発掘では「パトリ」と呼ばれる古代マヤのゲーム盤がよい保存状態で発見された。
一方、ホンジュラスのエルプエンテ遺跡では、建造物6の発掘調査や修復が継続され、隣接建造物2つとの切り合い状況等から建造シークエンスにかかわる知見が得られた。今回、発掘で回収した炭化材等からより正確な理化学的廃棄年代が得られる可能性が高くエル・プエンテ遺跡の衰退と放棄に関して、新たな知見が得られると思われる。そのほかに特記すべき発見としては、建造物6の外側に排水口をもつ、円形の石皿が設置されていたことが確認された。このように2015年度の調査では、文明中心地のティカルで王権発展期の重要な遺構が、周縁のエルプエンテでは衰退・放棄期の重要資料が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、研究代表者の担当するティカル遺跡では、集中的な発掘調査が年度当初から行われたこと、研究分担者の担当するエルプエンテ遺跡でも、研究分担者がサバティカル研究休暇で常時ホンジュラスに滞在していたところから、発掘調査が十分進んだ。
そのため、全体の調査計画は極めて順調に推移したということができる。ここから研究計画は現在までおおむね順調に進展しているという判断である。
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今後の研究の推進方策 |
上記で述べたように、2015年度は極めて順調に調査が推移したので、、2016年度も当初計画に沿って、着実に遂行していくことを目指す。
ティカル遺跡では、発掘調査区域を北のアクロポリスのその他の地区にも広げるとともに、2015年度の経験を活かして15メートル程度の深さまで発掘調査が行えるような初期の発掘面積を確保したい。また、ユネスコ日本信託基金による建造物の修復保存に先立つ事前発掘調査も年度の後半には可能となる見込みであるところ、それらの機会も活用して研究計画の進展を図りたい。
一方、エルプエンテ遺跡では、2015年度においては研究分担者が現地調査可能となるのは2ヶ月程度の見込みであり、着実に研究計画を進めていくことにつきる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ティカル遺跡における発掘調査で重要な発見(パトリ)があり、予想以上に成果が挙がったため、前倒し請求を行って80万円を2015年度の研究費に加えた。このため、2015年度の学術調査が終了した際に、最終的に少額の次年度繰越金が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額として繰り越した少額は、消耗品などの購入費にあてる。次年度分として請求した研究費は当初の予定通りに着実に使用する。
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備考 |
2015年7月4日の北國新聞朝刊に科研費による発掘調査成果が掲載された。
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