研究課題/領域番号 |
26300028
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小野 林太郎 東海大学, 海洋学部, 准教授 (40462204)
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研究分担者 |
米田 穣 東京大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30280712)
印東 道子 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (40203418)
竹中 正巳 鹿児島女子短期大学, その他部局等, 教授 (70264439)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウォーラシア海域 / 人類移住 / 資源利用 / 更新世後期 / 完新世初期 / スラウェシ中部 / 剥片石器 / 貝類の利用 |
研究実績の概要 |
本年度における研究成果としては、インドネシアのスラウェシ島中部域を対象とした考古学調査の実施をまず挙げることができる。これは2016年5月から6月にかけて、国立インドネシア考古学センターとの共同調査として実施されたもので、中スラウェシ州のモロワリ県沿岸に位置する石灰岩洞窟遺跡群での発掘調査である。前年度における遺跡踏査において確認されていた二つの大規模な石灰岩洞窟で試掘トレンチを2カ所づつ(計4か所)発掘でき、うちトポガロ2洞窟では、3mに達する良好な堆積層を確認できた。出土遺物も豊富で、大量のチャート製剥片石器、汽水産を中心とする貝類、齧歯類や小型哺乳類を中心とする動物遺存体のほか、上層からは多様な土器群、二次埋葬体と推測される人骨片、副葬品と推測される種々の装飾品が出土している。これら上層で出土した遺物群の多くは、その状況から金属器時代以降の埋葬遺跡と推測され、土器の多くも埋葬土器である可能性が高い。またトポガロ1洞窟では、調査時にも表面上に無数の木棺片と人骨片が散在しており、この遺跡が以前に木棺をともなう墓地としても利用されていたことを指摘できる。出土した炭化物、人骨、貝類の年代測定による結果からは、落盤のため表土より約1mの深度までしか発掘できなかったトポガロ1洞窟が完新世初期の9000年前頃、3mの地点まで発掘できたトポガロ2遺跡では29000年前まで遡ることが確認され、現時点ではスラウェシ中部で最古の遺跡であることが判明した。またいずれの遺跡もさらに下層が存在することは明らかであり、今後の継続調査でより古い時代の人類痕跡に迫ることができると予想される。出土遺物の分析は継続中であるが、これまで研究成果の一部は、2016年8月~9月にかけて京都で開催された世界考古学学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
考古学的な発掘調査の成果は、発掘によりどのような遺物や考古学的痕跡をどの程度に発見できるかがまずその成果の規模がどの程度のレベルとなるかの予測を可能にする。この点において、本年度に新たに発掘したトポガロ洞窟遺跡群は、その規模、遺跡数、そして発掘によって明らかとなった遺物量と時間幅において、インドネシアにおける人類史上においても極めて重要な遺跡群となる可能性が高い。このような遺跡に出会えるかは運も必要となり、当初の計画ではここまでレベルの高い遺跡に出会えるの可能性は低いと予想し、より小規模な遺物量に基づく新たな考古学データの収集と分析を考えていた。また遺跡発掘から対象とできる時代もより限定的となる可能性が高かったが、今年度の発掘により、対象とする遺跡が後期更新世から完新世における長期的な時間幅で人類の足跡へアプローチできることが明らかとなった。とくに旧石器時代、新石器時代、金属器時代から、近世期と大きく4つの時代にまたがり、これまで考古学的データが皆無に近かったスラウェシ中部域での人類・考古学的データを収集できることが明らかとなったことから、本年度の成果は当初の計画以上と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果でも報告したように、平成28年度の発掘では対象とする遺跡の規模が極めて大きいことが確認された。また出土遺物も多いため、今後の研究においては研究分担者のみでなく、国内外の専門家に協力者として参加してもらい、多角的な分析を進める必要がある。可能であれば、遺跡の発掘も継続すべきであるが、本プロジェクトは平成29年度が最終年度となるため、まずは平成28年度に発掘した出土遺物の分析を進め、その分析結果を国内外の学会、学術誌において公表していく必要がある。その上で、改めて新たな研究プロジェクトの計画をしていくことが求められる。また遺跡からは大量の人骨も出土しており、過去における埋葬文化や人類移動を明らかにするうえでも、これら人骨群の埋葬状況や形態分析、さらにはDNA分析を共同調査の形で展開する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者がインドネシアにおいて分析を予定していた調査期間が十分に取れず、出張期間が短縮されたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度よりも長期の出張期間による分析を計画するほか、分析に必要な機器がいくつかあるため、その購入も予定しており、十分に使用可能と判断している。
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