研究課題/領域番号 |
26300029
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
寺村 裕史 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 助教 (10455230)
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研究分担者 |
新納 泉 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20172611)
津村 宏臣 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (40376934)
長田 俊樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 名誉教授 (50260055)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 考古学 / インダス文明 / 墳墓 / 社会景観 / 地理情報システム |
研究実績の概要 |
本研究は、インダス文明期の社会構造理解を深化するために、インダス文明期の墳墓に焦点を当て、その形状・立地場所や埋蔵形態などを当時の社会構造と関連付けて解明することを目的としている。 平成26年度にインド側(グジャラート州考古局ならびにラージャスターン・ヴィディアピート大学)と締結したMOU(研究交流の覚書)にもとづき、27年度は2016年1月~2月にかけてグジャラート州カーンメール遺跡の発掘調査を、昨年度に引き続き実施した。城塞南側のトレンチにおいては、ちょうど南壁の中央部分において、両側の石積みとは異なる積み方がなされた遺構を確認した。現時点では、この箇所は建造当初のゲート(城門)の可能性が高いと判断している。また、そのすぐ西側(左側)には、壁がせり出し部屋のような区画が設けられていることから、門のすぐそばに門衛所のような機能を持った施設が付設されていた可能性もある。 以前の調査において、カーンメール遺跡ではゲートが確認できていなかったが、今回の調査でゲートを検出できたことは、城塞への出入り口がどこに設けられていたのかが明らかになった点において、大きな成果であると考えている。 また、同じグジャラート州ダネッティ遺跡においては、墳墓ならびに土壙墓の位置・分布範囲をGPSにより記録し、並行して地形測量・GPR(地中レーダー)探査を2016年2月に実施した。探査成果に関しては、現在分析途中であるが、マウンドの中央部分に土壙と思われる異常応答がみられ、墓の可能性が考えられる。当遺跡における墓の配置や、マウンドの形態に関して重要な情報が得られたのは、大きな成果である。 また、上記調査と並行して、インダス文明期の墓に関わる遺跡の集成作業も継続しておこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーンメール遺跡において、城塞への出入り口と考えられるゲートの遺構を確認できたことは、想定以上の成果と判断できる。ただし、墓に関わる遺構を検出できていないため、本研究課題の目的に対する状況としては、やや遅れている部分であると考えている。 またダネッティ遺跡については、墓の位置情報の記録や地形測量・GPR(地中レーダー)探査を実施完了することができ、おおむね順調に進展していると評価できる。 インダス文明期の墓に関する資料集成は、本年度中に完了はできなかったが、順調にデータは集まってきており、進捗状況としては問題ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成28年度)は、最終年度にあたるため、2年間の成果をまとめ成果概要報告書の編集・印刷作業を実施する。具体的には、カーンメール遺跡の発掘調査概要報告書の作成のため、渡印してインド側の研究協力者と作業内容について詰める。そしてダネッティ遺跡の調査成果に関しても、学会等において発表する予定である。 また、それらにインダス文明期の墓に関わる遺跡集成も含めて、インダス文明期の社会景観に関わる考察を加え報告書の内容に反映させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査打ち合わせのために本年度8月にインドに渡航する予定であったが、ビザ取得申請手続きの関係上、ビザを取得できたものの、実際に渡航するには至らなかった。そのため、その渡航に関わる旅費が、次年度に繰り越しされることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は最終年度であるため、その成果概要報告書の編集・印刷の作業を実施する予定である。その際に、編集作業の打ち合わせ旅費の一部、ならびに印刷・製本費に充当して支出する予定である。
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備考 |
『毎日小学生新聞』12月26日「みんぱく世界の旅 インド① インダス文明のめずらしい遺物」で、本研究課題の成果の一部を紹介。
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