研究課題/領域番号 |
26300031
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
杉山 洋 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 部長 (50150066)
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研究分担者 |
淺湫 毅 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 教育講座室長 (10249914)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カンボジア / ポストアンコール / 上座仏教 / 仏像 / 生産遺跡 / 建築史学 / 美術史学 / 考古学 |
研究実績の概要 |
26年度の研究では、次の各項目について研究を進めた。 1.ポスト・アンコール期の都城であるロンヴェーク遺跡に関して、本格的な調査を行うため、文化芸術省との打ち合わせや、現地での予備調査を行った。予備調査の過程で、ロンヴェーク北方のベン・クナー寺院から、鎮壇具の一括出土の情報が寄せられた。ポスト・アンコール期でもかなり新しい遺物群であるが、当該期の貿易の様子、寺院祭祀の様子などが明らかになる貴重な遺物群として、ロンヴェーク都城調査に先行して本件の調査を行うことにした。 2.アンコール王朝末期に整備された中型遺跡として著名な西トップ遺跡に関して、発掘調査を行い、15世紀以降に建設されたラテライト基壇の構造を明らかにした。14世紀頃に整備された3祠堂群と、その周囲に点在するストゥーパ群との関係や時代などを明らかにした。また詳細な3D測量を行い、砂岩建造物の建立過程を図上で明らかにすることができた。 3.西トップ遺跡の周囲に点在する仏教テラスについて予備的調査を行い、27年度の調査に備えた。この調査によって西トップ遺跡の北側に大型の仏教テラスが存在することがわかり、27年度には調査を進めることにした。 4.アンコール王朝後期の11世紀に始まったとされる黒褐釉陶器の窯跡、ヴィール・スヴァイ1号窯の発掘調査を行った。今年度の調査によって燃焼室と焼成室の概要が判明し、これまでに調査されている窯とは構造に違いのあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の調査対象として掲げたロンヴェークの調査に関しては、本格的な調査に向けた予備調査を行った。調査は行ったが予備調査にとどまった。ただしこの予備調査を行ったことにより平成27年度は順調に本格的調査を進めることができると考えられる。 西トップ遺跡に関しては、平成26年度の調査により、アンコール期からポスト・アンコール期への移行の状況がより鮮明に明らかになり、予定以上の成果が上がったと考えられる。さらに西トップ遺跡の北側で新たなポスト・アンコール期の仏教テラスが発見され、今後の調査が期待される。 以上を総合して(2)おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に目的遺跡であるロンヴェーク遺跡調査の予備的な調整作業は終了しており、本年度以降、本格的な調査を行う。さらに付随するクラン・コー遺跡をはじめとする周辺の諸遺跡についても、調査を進める。 西トップ遺跡に関しては、本年度は釈迦立像の浮彫がある北祠堂の調査に入る。アンコール王朝末期の遺跡の実態把握だけでなく、当該期における上座仏教の彫像に関する調査も同時に進めることができる。 また昨年度に西トップ遺跡の近くで発見した仏教テラスは、27年度に本格的な調査に入る。大型の結界石や基壇遺構などがジャングルに埋もれた状態で確認でき、今後の調査成果が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は王都ロンヴェークでの本格的調査を予定していたが、カンボジア文化芸術省との調整に時間がかかり、予備調査にとどまった。そのため調査に使用する車両代、作業員賃金とうの発掘調査費用が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はこの未使用額を合わせて、効率よく調査をすることによって、ロンヴェークだけでなくクラン・コー遺跡においても調査を実施することが可能となる。
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