研究課題/領域番号 |
26300032
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田林 明 筑波大学, 名誉教授 (70092525)
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研究分担者 |
矢ケ崎 典隆 日本大学, 文理学部, 教授 (30166475)
兼子 純 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40375449)
菊地 俊夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (50169827)
仁平 尊明 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60344868)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農村地理学 / 農村空間 / 商品化 / 都市-農村共生システム / 地域性 |
研究実績の概要 |
本研究は魅力的な自然景観が展開し、多様な農業が営まれ、都市住民のレクリエーションや農村居住をはじめとして様々な形の農村空間の商品化が進んでいるカナダのブリティッシュコロンビア州において、農村空間の商品化がいかなる形態で、どのように進み、それによっていかに農業・農村が維持されているかを明らかにする。その際に、日本での農村空間の商品化を念頭に、比較という視点を含める。まず、日本での農村空間の商品化の動向を再確認するとともに、関連する論文・著書、ウエッブサイトの情報、農業センサスなどの統計から、ブリティッシュコロンビア州の農業と観光、そして農村空間の商品化の全体的動向を把握した。そのうえで、研究代表者・分担者が共同で、ブリティッシュコロンビア州の南部および中部を中心に現地調査を行った。また、これに加えて個別にオカナガン地域の現地調査を行った。 その結果、農村空間の商品化が特に進展しているのは、(1)ローアー・メインランドと(2)バンクーバー島、(3)オカナガン、(4)トンプソン・カリブーの4つの地域であることが明らかになり、今後これらを重点的に調査・研究することにした。ローアー・メインランド地域では、ホビー農業や農産物直売所、農場ツアー、摘み取り、乗馬、農村居住など多様な商品化がみられた。バンクーバー島南東部でも商品化は多様であったが、ローカルフードの消費とそれに基づくスローシティの構築が地域を特徴づけるものであった。また、オカナガン地域を象徴するものは、ワインツーリズムであった。大規模な牧場地域であったトンプソン・カリブー地域では観光牧場への転換、酪製品のブランド化といった農村空間の商品化が重要である。全体としてブリティッシコロンビア州では、農村空間の商品化が日本よりも多様に展開しており、それが地域の産業や社会を維持するために重要な役割を果たしていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではカナダのブリティッシュコロンビア州における現地調査を中心に、文献や統計、ウエッブサイト情報などの分析を補足的に活用して研究を進めるものである。平成26年度は初年度であるので、研究代表者および分担者が共同で、さらには現地の研究協力者を加えて、広い範囲で予察的な調査を実施した。その結果、日本の面積の2.5倍にもおよぶブリティッシュコロンビア州において特に農村空間の商品化が進行している4つの地域を把握し、今後の調査・研究の範囲を絞り込むことができた。さらに、様々な農村空間の商品化の形態のうち、それぞれの地域を特徴づける特に重要なものを抽出することができたので、調査の目標が明確になった。官公庁および研究機関において協力を得ることができる人物との信頼関係もある程度構築することができた。 また、カナダでの研究は、日本における農村空間の商品化の状況が比較の基準として重要であるが、その点については平成26年度に論文・著書としてまとめることができた。また、これまでの調査結果を学会等で発表するなかで、今後検討すべき様々な現象や視点・論点などが指摘され、今後の調査の内容が定まってきている。 これらのことから、全体として研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究・調査の結果から、ブリティッシュコロンビア州において農村空間の商品化が進行し特徴ある地域として、(1)ローアー・メインランド地域、(2)バンクバー島地域、(3)オカナガン地域、(4)トンプソン・カリブー地域の4つが重要であることがわかったので、今後、これらの地域において重点的に現地調査を行うことにした。 平成27年度には6月に2週間の予定で、共同でローアー・メンランド地域とバンクーバー島地域の現地調査を行う。最初の1週間で調査するローアー・メインランドでは、アボッツフォードを中心として、サークルファームツアー(観光農園や農産物直売所、農家レストラン、ワイナリーなどを訪れる農村観光)、ホビー農業、農村居住の事例を調査するととともに、州政府の農業と観光などの研究機関で情報を収集する。後半の1週間では、バンクーバー島地域のコーチャンベイのスローシティに焦点をあてて現地調査を行う。現地調査では、農村の商品の供給側と消費側の両者に注目する。9月に矢ヶ崎を中心として、オカナガン地域で2週間ほどの現地調査を行う。ワインツーリズム、保養地、果樹地域の変容が現地調査の中心的課題である。9月~12月に、必要に応じて個別に、あるいは共同で補足調査を行う。 平成28年度以降もトンプソン・カリブー地域を加えた4つの地域を中心に現地調査を行うとともに、農村空間の商品化の形態を分類し、その特徴と地域差を分析することから、都市-農村共生システムの構築について考察し、最終的にはブリティッシュコロンビア州の地域性を明らかにする。 日本地理学会や人文地理学会、地理空間学会、カナダ学会等において、研究成果の発表を行う。メンバーによる連続発表あるいはシンポジュウム等、共同の研究成果が伝わるよう発表形式を工夫する。年に3~4回メンバー全員があつまり、研究結果の整理と新たな研究の推進方策について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者については、現地での研究協力者の旅費および宿泊費を当初予定していたが、研究協力者が自らの研究費によって共同研究に参加したので、その分が未使用となった。また、研究分担者の菊地は、研究メンバーの利便性から4回の研究打合会のうち3回が東京で行われたために、東京在住で国内旅費が当初の予定ほどかからず、結果として未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの次年度使用額を旅費に加えて、十分な現地調査をできるようにする。
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