研究課題/領域番号 |
26300034
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
吉田 晃章 東海大学, 文学部, 講師 (60580842)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メキシコ西部地域 / 先スペイン期 / 埋葬文化研究 |
研究実績の概要 |
新大陸文明間の交流を問う端緒として、メキシコ西部と南米北西部に主に先古典期中期から古典期前期(前1000年~後600年頃)にかけて興った縦穴付水平墓室の埋葬文化に焦点を当て、埋葬文化拡大のプロセスと文明間交流を実証的に研究・解明しようとすることが本研究の目的である。初年度はこの研究目的を達成すべく、現地研究者・研究機関との折衝と対象地域の踏査を積極的に行った。ハリスコ州南部のサユラ盆地、サコアルコ盆地のすでに登録済みの遺跡を訪れると同時に、未踏査地域の踏査から新たな遺跡を複数発見することができた。これは今まで不明であった盆地北部地域の遺跡分布と盆地利用の解明につながる発見であった。また年度末の26年3月にも調査地周辺で踏査を行い、カウンターパートであるグアダラハラ大学の考古学者らと次年度の発掘調査と表面調査について打ち合せをし、次年度発掘する域内の地区をほぼ絞り込むことができた。 帰国後は、踏査データと文献資料を精査し、新たな遺跡に関する情報と共に踏査結果を調査研究速報として公表した(単著 吉田晃章「メキシコ西部サユラ盆地およびサコアルコ盆地における踏査概報(2014)」、『古代アメリカ』、17号、pp.73-88、古代アメリカ学会、査読有)。さらに12月6日に古代アメリカ学会第19回研究大会で、踏査から得られた情報をもとに西部地域における先スペイン期の生業活動と遺跡分布の関係についての口頭発表を行った(吉田晃章「メキシコ西部、サユラ、サコアルコ盆地における踏査概報」、古代アメリカ学会第19回研究大会、2014年12月16日 於):名古屋大学野依記念学術交流館)。また、新大陸文明間の交流に関する研究の問題点を指摘する記事を寄稿した(From the Field「文明間の交流から再考する新大陸」、『比較文明学会会報』、第62号、p.10、比較文明学会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画として、8月-9月と2月-3月に、地域内における遺跡の分布調査を行ない、発掘調査を行うべき遺跡を決定すること掲げたが、ほぼ同様の日程で、対象地域の踏査を実施することができた。さらに、初年度は円滑な調査を行うために、関係諸機関との連絡、連携を図り、3年間の調査をより充実したものとするべく調査基盤のさらなる拡充に努めるとしたが、予定通り、現地での要となるグアダラハラ大学考古学者の2名と、また現地で遺跡を管轄する機関INAHとコンタクトを取ることができた。また、26年3月には現地研究者との打ち合わせにおいて、次年度以降発掘を含む調査を実施する遺跡をほぼ選定することができた。現地調査の「発掘」許可申請は、27年度に提出を予定しており、このように調査はおおむね順調に進んでいると言える。 また、研究成果の公表としては、26年度は古代アメリカ学会での発表を予定したが、これも計画通り実施することができた。学会においても実地踏査に基づく、初めてのメキシコ西部地域に関する報告となり、貴重な成果を報告することができたと考えている。また比較文明学会の会報にも寄稿することができ、この点は想定していたよりも成果を公表することができており、今後も積極的な成果の公表と社会への還元に努めたいと考えている。WEBでの成果報告も検討しているが、現在のところの実施には至っていない。 最後に、縦穴付の水平墓室の埋葬文化伝統がいかに拡大したかを解明しようとする研究全体の目的から、達成度を判断することは、現段階では発掘によるオリジナルの調査データを示すことができていないため、きわめて困難である。しかしながら文献調査も進めており、次年度以降の発掘などの調査結果を含めて、判断を下したいと考えている。ただし目的達成のための調査実施という点では、おおむね予定どおりの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、調査対象地域であるメキシコ西部サユラ盆地及びサコアルコ盆地において前年度実施の踏査から得られたデータをもとに、発掘調査を行なうべき遺跡を最終的に選定する。その後、発掘調査を行うとともに出土遺物の整理・分析を行いたい。 現段階では、現地研究者との打ち合わせにより、特定の地域を発掘対象地域として決定している。そのため今年度6月までには、現地機関に申請する調査計画書案を作成することとなっている。夏(8月)には、現地に赴き特定地域を重点的に踏査するとともに、最終的に発掘する遺跡を決定し、発掘申請を行う。夏は雨季で発掘は不可能なため、順調に調査が進展した場合は、西部地域のタラスカ文化に関連する遺跡を訪れたい。その後、乾季の平成28年2月に1ヶ月かけて発掘調査と遺跡近辺の集中的な表面調査を実施する予定である。 以下は、主な具体的研究活動となる。1)縦穴付水平墓室を含む遺構を中心に層位発掘を行い、出土遺物の整理・分析を行う。2)土器の分析に基づいて、当該遺跡の文化編年を明らかにする。 3)炭化物が出土した場合には、C14年代測定法を用いて、遺跡の絶対年代を特定する。 4)遺構の測量を行い遺跡の全体的構造を図化し、その特徴を明らかにする。5)対象遺跡周辺における詳細な踏査を実施し、すでに調査が行われている主要遺跡との共時的通時的関係を解明する。 6)調査実施期間は、平成27年8月(約1ヶ月)、平成28年2月(約1ヶ月)とする。また、日本国内において、継続的に測量図および実測図などの作成を行なって完成させる。 さらに、研究実績を報告すべく所属学会での研究発表を予定している。また、成果を公表すべく、学会誌への投稿を検討している。なお昨年度実施を見送ったWEBでの研究データの公開について、今年度は準備を進めWEBページを作成し、研究データを広く開示し社会に還元できるように努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の支出として、「情報と専門知識の供与」に対する謝金を想定していたが、科学研究費による調査以前から現地研究者と友好な関係を築いてきたため、現在のところ該当の経費が繰り越される形となった。また、年度末にカード決済をしたレンタカー代金があったため、意図して一部繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
まず、年度末にカード決済をしたレンタカー代金の支出に充当する。また、次年度には発掘調査を予定しており、人件費がかさむことが予想される。このため、レンタカー代金を差し引いた金額は、人件費(作業員または情報と専門知識の供与に対する謝金)として使用する計画である。
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