研究課題/領域番号 |
26300040
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
野林 厚志 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 教授 (10290925)
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研究分担者 |
宮岡 真央子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (70435113)
松岡 格 獨協大学, 国際言語文化学部, 准教授 (40598413)
森口 恒一 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (10145279)
笠原 政治 横浜国立大学, その他部局等, 名誉教授 (70130747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 台湾原住民族 / 民族分類 / エスニシティ / 人類学 / 民族の公的認定 / アイデンティティ / 先住民研究 / 台湾 |
研究実績の概要 |
本年度は当初計画にしたがい、各自の課題に関する現地・文献調査を実施し、他の科研課題との共催による国際ワークショップ「台湾原住民の姓名と身分登録-過去と現在をつなぐ文化・社会・制度-」(2015年12月12日、於早稲田大学)、台湾における国際研究集会『第8回台日原住民族研究論壇』(2015年10月29~11月1日)等で研究成果の公開と国内外の研究者との議論を行った。個別研究は以下の通りである。 代表者の野林は、台湾東部地域の原住民族の工芸生産とアイデンティティの関係に関する調査を継続した。特にトンボ玉装飾品制作における世代とジェンダーに関する予備的な調査を行った。分担者の宮岡は、2014年に新たに原住民族として公的に認定されたサアロアとカナカナブについて、日本統治期の民族分類の変遷を文献資料から明らかにするとともに、両族の正名(認定要求)に至る経緯および認定後の動向を他の原住民族の状況と比較考察した。また、ツォウの個人名の変遷の調査研究も行った。分担者の松岡は、台湾南部のパイワン族居住地域で、家屋の儀礼について実施当事者から聞き取り調査を行った。また学術会議や文献調査において原住民族の姓名について多くの情報を得た。分担者の笠原は、台湾原住民族の分類に関する清朝統治時代の漢語資料および日本統治下1930年代の資料を収集し、論文・関連新著の書評等でそれらの資料に基づく研究成果を発表した。また、原住民族の新規認定とそれに伴うアイデンティティの変化について、現地研究者との学術交流を通して意見交換し、次年度の研究の見通しを得た。分担者の森口は、イトバヤット島でのある神父の宣教活動を現地の人達の報告を基にイトバヤット語と英語の対訳で記録・編集を行い、現地還元もあわせた印刷物、電子媒体の刊行した。また、蓄積してきた台湾の北ブヌン族の口承伝承の記述整理と編集、語彙集の作成の整理調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、前年度の調査、研究活動をふまえたうえで、代表者、分担者ともに各自の課題に本格的に取り組むことができた。同時に、本格的な調査を進めたことによって、発展的な課題の抽出にも成功している。代表者の野林が着手した工芸生産と世代やジェンダーとの関係、分担者の笠原が調査の見通しをもった、民族認定とアイデンティティの変化との相互作用がこれらにあたる。また、研究計画の2年目にあたることから、研究成果の中間的な公開を含めた国際ワークショップ「台湾原住民の姓名と身分登録-過去と現在をつなぐ文化・社会・制度-」に研究計画参加者全員で取り組んだこと、ほぼ全員が台湾で開催された国際研究集会『第8回台日原住民族研究論壇』に、発表者、ディスカッサントとして参加する等、各個研究にとどまらず、プロジェクト全体としての議論を外部研究者とともに深化させる機会を意識的に作ってきた。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、第二年度の研究計画はほぼ予定通りに進められたと同時に、予算の減額によって実施が困難と思われていた国際ワークショップを他の研究者が代表となっている科研費の研究課題と共催で実施したり、各研究参画者の海外調査時期をあわせる等の工夫をしながら、当初計画の遂行を実現してきたことから、今後も同様な工夫をして、成果の公開等に意欲的に取り組むことが重要であると考えている。具体的な研究内容については、政権交代等によって、台湾社会が今後、政治的に変動する可能性が十分に予測されており、これらにともなう原住民族政策の変更等が、民族認定や原住民族文化の振興等にどのような影響を与えていくかについて留意した調査を行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の4月初旬に開催されたヨーロッパ台湾学会において研究成果の公開を予定していたが、公開予定の研究内容について議論の補強が必要である他、次年度の調査成果を合わせたかたちでの成果公開とする方がより国際的なインパクトが強いと判断し、参加、発表を見送る判断を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年のヨーロッパ台湾学会は2017年の3月(次年度内)に開催される予定であり、この学会もしくはそれに相当する国際学会への参加に要する経費、国際学術雑誌への投稿に必要な経費としての使用を計画している。
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