研究課題/領域番号 |
26301001
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
下田 敦子 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 講師 (60322434)
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研究分担者 |
中川 正宣 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 研究員 (40155685)
綾部 真雄 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40307111)
大澤 清二 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 所長 (50114046)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 無文字社会 / 伝統衣服製作技術 / 身体技術の伝承 / 伝承方法の最適化 / 項目反応理論 |
研究実績の概要 |
①現地調査準備:調査員研修→②各民族の現存する衣服製作の技術要素調査(1次調査)を行い現状を把握→③技術要素の項目の抽出→以下3つの研究過程(a、b、c)に分かれる。 a 衣服製作技術の保存: a1 ②を深化させた精密な技術要素調査(2次調査)を行い→ a2 前のa1で用いる現地語用語集の編纂→ a3 a1の映像等を保存し図録、用語集を作製 b 技術要素による民族グループ分類: b1 技術要素の存在確認データ→ b2 クラスター分析して民族を技術要素の共通性で分類する。c 技術習得プログラムの開発: c1 技術習得状況調査(3次調査)→ c2 データセット作成→ c3 個々の技術要素の習得水準の計量→ c4 b2の結果から民族グループ別に因子分析し共通因子の抽出→ c5 項目反応理論を適用し解析する。技術要素の学習順序を難易度で最適化し→ c6 年齢変数によりc5を調整し学習最適年齢を求める。→ c7 技術習得プログラム(冊子)の開発→ c8 学校実習授業での検証→ c9 まとめと報告 28年度は、技術習得プログラムの開発に向けて、研究の中軸でもあるc5技術要素の難易度の計量と学習順序を項目反応理論の解析により求めた。推定された技術要素の難易度を昇順に並べ替えたところ、ある個人が特定の学習課題を習得してゆく過程で見られる学習曲線に極めて似ていた(これらの結果については日本発育発達学会、日本衣服学会などで公表した)。データ解析手法によって科学的に衣服製作の技術要素の学習順序を再構成することができた。さらにこれに、収集した技術要素の記録映像等に合わせて、伝承教育のための民族グループ別の、冊子「技術習得プログラム」を開発する準備が整った。なお、解説は全て現地語で行うこととした。 さらに、開発したプログラム検証のための実習授業の準備を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地の調査受け入れ体制はこれまでと同様に良好であり、おおむね順調に遂行することができた。 本研究は、急激な社会の変貌により現在消失の危機に瀕している無文字社会に伝承される身体を用いた衣服製作技術を対象としているが、調査地においてもそれは現実のものとなりつつある。熟練した技術者の高齢化、若い世代の村外への流出(出稼ぎ等)により、本研究の中軸である「技術習得状況調査データ」はますます収集しにくくなりつつある。このような状況にも関わらず、本研究では現在のところ順調に調査が進行しているのは現地協力者の努力に負うところが少なくない。
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今後の研究の推進方策 |
急激な社会の変貌により現在消失の危機に瀕しているパダウン(カヤン)、カヨー、チン、ナーガ、ポーカレン、カチンの衣服製作技術とその文化を保存し後世に伝えることを目的として研究を進める。29年度では「技術習得プログラム」の完成を目指す。 ミャンマーにおいては、研究協力機関を通じて、「技術習得プログラム」による衣服製作技術の伝承教育を実際に行うことを目指し、次の研究段階ではこのプログラムの有効性を実証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度に、現地の協力機関の都合により、研究計画の一部に変更が生じ、経費の支出計画に変更が生じたことから、28年度の支出計画に若干の影響を及ぼすこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記協力機関は29年度も変わらずに本研究に協力することを約束してくれている。29年度に使用する計画である。
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