研究課題/領域番号 |
26301004
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
矢作 弘 龍谷大学, その他部局等, 教授 (40364020)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トリノ / 縮小都市 / 脱工業化 / フォーディズム / FIAT |
研究実績の概要 |
<研究の狙い> 先進諸国の旧産業都市が共通して経験している「都市縮小」に注目し、縮小都市の持続可能な「かたち」を描き出す。「都市縮小」を単なる衰退とは捉えず、むしろ「環境負荷を軽減する方向で都市を再編/再生する機会になる」という仮説に立脚し、そうした機会を育む都市社会システム明らかにする。研究方法では、縮小都市の構造的な危機を象徴するハード/ソフトの「空き」(空き住宅/工場跡地/希薄化する地域社会の人間関係/雇用機会の喪失など)を、「都市再生につながる素材」として注目。 フィアットのあるトリノは、ヨーロッパではもっとも典型的なフォーディズム都市になった。それが脱工業化、グローバリズム、ヨーロッパ市場の統合に直面し、フィアットが1970年代央以降、急速に生産基盤を縮退――トリノは、縮小都市に転落した。そのトリノは、21世紀を迎える前後以降、「ポストフォーディズム都市(重厚長大型生産都市 ⇒ 消費都市+ハイテク知識集約都市:文化産業、エンターテイメント、ツーリズム、大学、IT&バイオ)への転換」を目指し、①「戦略プランⅠⅡⅢ」を指針に、②官学民協働の枠組みを構築し、急速に構造転換するようになった。脱フィアット(ワン・カンパニー・タウン)色を鮮明にしながら経済社会の構造転換を促進し、「トリノの奇跡」(A.Winkler[2007]Turin City Report)と称賛されている。 <活動> ①上記の狙いを踏まえ、現地調査を実施(2015年10月、2016年3月)、トリノ工科大学、トリノ大学の研究者と研究交流を重ねた、②衰退+再生地区San Salvario、郊外の都市緑化プランなどを視察、聞き取りを実施した、③文献の読み解き。 「地域開発」(日本地域開発センター)に論文を連載、紀要「龍谷政策学論集」に研究ノートを寄稿、出版計画に着手。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎年、メンバーが全員参加し、現地調査ができている。その際、現地の大学(トリノ工科大学、トリノ大学)の研究者(都市社会学、都市計画、環境計画)と学際的な研究交流を重ねてきたことが、研究の円滑な進展につながってきた。情報収集、現地の聞き取り先探しなどで支援を得た。 また、毎年度、その年度の調査研究の成果を、ジャーナルに発表し、蓄積している。その営為は、①今年度の研究でなにを明らかにできたか、②なにが今後の研究調査課題か――を確認する貴重な機会になっている。 今年度は「地域開発」(日本地域開発センター)に成果論文を連載発表する一方、紀要「龍谷政策学研究」にも研究ノートを寄稿した。 2016年度末を目処に、研究成果を出版する(藤原書店と計画の打ち合わせを開始した)。具体的な出版計画があるため、研究、現地調査も具体的になるメリットがある。
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今後の研究の推進方策 |
2016年8、11月にイタリアの聞き取り調査を実施する。また、トリノ工科大学の環境計画、及び都市計画史の研究者が5月に来日する際、研究会の開催を考えている。さらに2016年晩秋を目処に、トリノ工科大学の研究者(都市計画専攻)を招聘し、「縮小都市の都市計画」を巡って討論会を開催する。 2016年3月を目処にこれまでの調査研究の成果を単行本として出版する。『脱工業化都市トリノ――構造転換+再生の先端を走る!』(仮題)藤原書店。①近代フォーディズム型から脱却した地域の「かたち」――トリノ・シティリージョン②衰退地区San Salvarioのジェントリフィケーションを考える③「多層的なプログラムによるトリノの都市イノベーション:コミュニティからEUまで」④「産業転換による工場転用と地域の活性化」④「スロー」的思考とソーシャル・イノベーション―メトロポリタン化に向けた食文化ネットワークの新たな展開⑤ポスト産業都市における地域コミュニティ⑥What Tourists Ignore; Ambivalences, Conflicts and Compromises in a Changing Neighbourhood⑦緑の空間計画--が内容である。 2017年春休み、または2017年度に最終的な現地調査を実施し、紀要に成果報告をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査を2度、計画したが参加者の日程調整が難しかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現地調査を積極的に実施する。 トリノ大学、トリノ工科大学の研究者を招聘し、有効な研究会の開催に努める。
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